高架道路を「空中公園」にできる? 名古屋で転用目指す動き
里山の道路はやめて公園に ── 。 名古屋市が緑地を切り開いて進めている市道の建設工事をめぐり、住民側が環境保全のために道路計画を撤回し、すでに出来上がっている高架部分などを公園に転用したらどうかと提案しています。米ニューヨークの実例を参考に、高架道を「空中公園」に生まれ変わらせるという大胆な案。日本の制度上、ハードルは極めて高そうですが、実現すれば各地の廃路線活用などに道が開ける可能性も出てきそうです。
8割建設してストップした名古屋の市道
問題になっているのは、名古屋市東部の天白区にある相生山(あいおいやま)緑地を横断する市道「弥富相生山線」。昭和30年代に周辺の宅地化を見込み、渋滞解消の目的で計画された都市計画道路です。 緑地は全国的にも珍しいヒメボタルの群生地で、計画には当初から一部の住民や自然愛好家から反対の声が上がっていました。市は環境に配慮するとして住民と専門家らを交えた議論を重ね、設計を一部見直した上で2004年に着工しました。総工費は36億円で、2011年中には完成する見込みでした。
ところが、2009年に当選した河村たかし市長が「議論は不十分。ホタルなどへの影響についてさらに検証を」と指示。全体の8割に当たる約700メートルまで終わっていた工事を中断させたのです。 河村市長は専門家の顔ぶれを変え、新たな第三者委員会を発足。環境影響などが再検証されましたが、「科学的データが少ない」などの理由で最終的な判断は出ず、市長の政治判断に任されました。市長は「住民投票で決める」と主張していましたが、今月になって賛否それぞれの住民を集めて意見を聴く「意向調査」を実施。その上で「次の予算編成をする12月の終わりまでに結論を出す」と述べました。 意向調査で賛成派の住民は、渋滞解消のほか「火事や災害など緊急車両の通行に必要」「道路がないと、狭い通学路にも車が入り込み、子どもの安全が脅かされる」「ホタルより人間の命が大事だ」と強調。これに対し、反対派住民は「ここ数年で新しい地下鉄駅も開業し、渋滞はすでに解消されている」「人口減少で自然に交通量も減る」「災害を防ぐため保水力のある里山を守るべきだ」などと主張しました。そして、道路建設を止める代わりに示されたのが「公園」の提案だったのです。