どこでも起きうる災害列島の脅威に、「自分ごと」として向き合う有権者の選択が問われよう。 　石川県の能登半島を襲った豪雨被害から1カ月がたった。元日の大地震の爪痕深い被災地への追い打ちで、復旧途上の道路や水道などが寸断され、さらに生活再建の遅れが懸念される。 　地方の狭い半島での複合災害は、交通アクセスの困難さが人命救助や物資救援、復旧の足かせとなる。集落の孤立、人手不足など災害対応の弱点をあぶり出した。 　被災者が身を寄せる避難所の環境改善も遅々として進んでいない。体育館で雑魚寝し、プライバシーはおろか、トイレ不足など衛生面にも不安を抱えて過ごす姿に、「30年前の阪神大震災と変わらない」の嘆き声が聞かれる。 　避難生活の心身の負担による災害関連死は、能登地震後の犠牲者の約4割に上っている。「救える命」を守り、暮らしを立て直す国と自治体の責任は重い。 　選挙公約では、自民党や公明党はトイレカーや風呂設備の導入促進など環境改善策を提示。立憲民主党は、生活再建を後押しする「災害損失控除」創設、共産党は再建支援金の増額などを掲げる。 　各自治体は避難所の改修、備蓄の積み増しなどの予算や管理・運営体制をどう確保するかに悩んでいる。障害者や高齢者らへの福祉介助や車中泊、在宅の避難者らに対する援助の強化も懸案だ。 　石破茂首相は、災害対応の司令塔となる「防災庁」設置を目玉政策に掲げ、自民公約も準備を進めるとした。かねて全国知事会や一部の野党も防災省庁を求めるが、組織体制や予算、権限などの全体像はまだ見えていない。 　「組織ありき」でなく、災害対応の統括と地域への財政、人材、ノウハウ支援の抜本的な強化策が求められよう。 　巨大台風や豪雨の頻発など気候災害への対応と、要因とされる地球温暖化の防止はまったなしだ。 　与野党とも2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする国際公約の実現を掲げる。自民や日本維新の会は原発活用を位置付け、立民などは再生可能エネルギーや省エネの拡大に力点を置く。 　今夏に初めて注意情報が出された南海トラフ巨大地震をはじめ、来る災害を前提にハードとソフトの防災、減災策を講じるとともに、いかなる事態にも対応できる財政余力を高めておきたい。