杉咲花×若葉竜也『アンメット』4話をレビュー。ミヤビはどちらの医者を選べばいいの
希望を見せる三瓶(若葉竜也)を信じるのか、主治医・大迫(井浦新)に従うのか、悩む川内ミヤビ(杉咲花)。『アンメット ある脳外科医の日記』(フジテレビ系月曜夜10時~)4話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
どう生きるのかを病気がつきつける
脳動脈瘤が破裂するリスクは年間約1%。しかし、もし破裂してしまえば約半数に重度の障害が残る、あるいは死に至ることもある。脳動脈瘤の手術をした場合、後遺症が残る確率は4~10%。 3話に登場する患者は、未破裂脳動脈瘤が見つかったロボット工学研究者、加瀬(前原瑞樹)。20人に1人が未破裂脳動脈瘤を持つ統計もあるという川内ミヤビ(杉咲花)の説明に、「えっ、じゃあ脳ドックを受けなければ悩まずに済んだってこと!?」と加瀬があげる悲痛な叫び。私も前々から一度受けてみようと思っていた脳ドックへの思いが揺らいだ。 確率を計算しては不安を募らせる加瀬。手術をするかしないか悩むあまり、日常生活さえおろそかになりつつある加瀬は「この動脈瘤が教えてくれたらいいのに」とこぼす。それに対するミヤビの答えは「答えてはくれないですけど、加瀬さん自身がどうされたいのか。この未破裂脳動脈瘤とどうつきあってくらしていきたいのか。知りたがってるかもしれないですね」。 「逆に僕がこいつに問われているんですね。僕はどう生きるべきなのか」 そして、家族と楽しく生きるため、加瀬は手術を決断する。病気とは、どう生きるかをつきつけられるものなのだということが改めて伝わってきた。
三瓶と大迫、二人の医者のスタンス
今回の加瀬の「どちらを選ぶか」の悩みは、そのままミヤビの悩みに重なってくる。 ミヤビに治る可能性があると伝えた三瓶(若葉竜也)。そんな三瓶を、「軽々しく患者に希望を見せる危険な医者」という大迫(井浦新)。三瓶の見せる希望にすがるのか。母娘二代にわたってお世話になった、家族ぐるみで神とさえあがめている主治医の大迫を信じ続けるのか。 ただでさえ難しい決断を、ミヤビは過去の自分が書いた日記を毎日新たになぞって考えなければならない。かつて、それぞれとともに過ごした時間も、そこで重ねてきた信頼も、文字として知ることしかできない。 三瓶と大迫、二人のスタンスの違いが、大迫の受け持っている少年の手術であらわになる。ミヤビのカルテを見たくて関東医大に通い詰める三瓶。そこで出会った少年の脳腫瘍の手術をたまたま覗くことになった三瓶は、大迫による「(安全のため)腫瘍を取りきらずに手術を終える」という判断に異を唱え、助手になりすまして手術室へ。そのまま腫瘍の全除去を果たす。 かなり非現実的な展開ではあるが、いずれにしろ手術が成功しているのだから、三瓶が正しいと思ってしまいそうになる。けれど、大迫の判断はおそらく相当リアリティのあるものではないか。危険を冒して手術を施すことは、決して褒められることではない。現実でも、こうして医者一人ひとりが、患者のリスクとその時々の状況を天秤にかけ、迷い悩みながら治療を行っているのだろう。 この手術シーンも、この後で行なわれた綾野(岡山天音)によるカテーテル手術のシーンも、本格的な装備や道具が使われていて、専門的な会話が繰り広げられ、素人にはどこまで実際に忠実かはわからないが、とても力が入っていることが伝わってくる。具体的に理解ができなくとも、物語を支えるシーンが大切にされているという作り手の姿勢が見えて、うれしくなる。