９回１死三塁、左前にサヨナラ打を放ち、両手を広げて喜ぶ若林（カメラ・中島　傑）

◆ＪＥＲＡ　セ・リーグ　巨人３×―２ＤｅＮＡ（１２日・東京ドーム） 　巨人が今季５度目のサヨナラ勝ちでＤｅＮＡを下し、今季最長タイの６連勝。４度目の挑戦で“貯金６の壁”を突破して首位を守った。９回１死三塁、若林楽人外野手（２６）が移籍後初の劇打を放った。２回に岡本和真内野手（２８）がリーグ単独トップに立つ１６号ソロ。１度は逆転を許したが、１点を追う８回に丸佳浩外野手（３５）が同点８号ソロを放って試合を振り出しに。１軍に復帰した坂本勇人内野手（３５）は「６番・三塁」で出場し、無安打に終わったものの好守や自己犠牲のプレーで存在感を発揮した。 【ハイライト動画】若林楽人のサヨナラ打で巨人６連勝　首位ガッチリ　 　喜びと興奮が入り交じった。巨人移籍後初のサヨナラ打。若林はベンチを飛び出した仲間にもみくちゃにされ、気持ちよさそうに汗とウォーターシャワーでぬれた髪を両手で拭った。お立ち台で「まだ頭が回っていなくて…。また明日も引き締めて頑張ります」。ニューヒーローは、Ｇ党からの大声援に包まれながら初々しくはにかんだ。 　ネクストサークルで目にした光景が、勇気を与えてくれた。２―２の９回無死二塁で、坂本が２ストライクと追い込まれながら内角のスプリットに食らいつき、強引に二ゴロを転がして走者を進めてくれた。執念が詰まった進塁打に「すごかった。自分にあれができるかなと。気持ちを強く持って行きました」。初球の外角１４１キロスプリットを迷わず振り抜いた。鋭い打球が三遊間を破った。今日が初対面だったレジェンドに「ナイスバッティング！」と抱擁で祝福された。 　「今日はなんか…頭が冷静でした」と強心臓の男は、発想も型破りだ。西武時代は１年目の２１年に左膝負傷で長期離脱。翌２２年の春先に復帰すると「１８０センチで、１８０キロ投げるピッチャーを想定してスイングしてます」。現実には存在しない最強投手をイメージしながら離脱期間は体づくりに励み、５０メートル５秒８の俊足にパンチ力を兼ね備えて再起した。 　その体と頭に秘めた“ロマン”こそ、巨人が求めていたものだった。阿部監督は「ポテンシャルも素晴らしいし、独特な世界を持っている方なので」と笑顔で若林の魅力を語った上で「何かやってくれるんじゃないかという期待感をすごく持たせてくれるような選手だなと思って、西武とのトレードをさせてもらいました」と明かした。５試合ぶりのスタメン起用に結果で応え、佐々木、立岡らと争う左翼の定位置争いで大きなアピールとなった。 　持っている男だ。移籍前の西武でも５月１日の日本ハム戦（ベルーナＤ）でサヨナラ２ランを放っており、同一シーズンでの２球団でのサヨナラ打は史上初。試合前練習はジャイアンツカラーであるオレンジの手袋をはめる一方で「３５」と西武時代の背番号が縫いつけられたスパイクでプレー。「まだ“ジャイアンツタイム”に慣れていないです」と笑ったが、先発出場した４試合で計１３打数５安打、打率３割８分５厘。６月下旬の加入から１か月もたたないうちに、確実にチームの戦力となっている。チームは０ゲーム差だった２位・ＤｅＮＡとの首位攻防戦第１ラウンドを制して６連勝。日替わりヒーローが生まれる巨人が、勝負の夏で上昇気流に乗っている。（内田　拓希） 　【記録室】巨人は若林のサヨナラ安打で勝利。今季、チームのサヨナラ試合は５勝５敗となった。 　若林はシーズン途中、巨人に加入してきたが、移籍前の西武でも、５月１日の日本ハム戦でサヨナラ本塁打を打っており、今季２本目、通算２本目のサヨナラ安打になった。 　若林は２球団でサヨナラ安打となったが、複数球団でサヨナラ安打は、３球団でサヨナラ本塁打した清原和博（西、巨、オ）をはじめ、現役では西武、オリックス、巨人の３球団でサヨナラ安打した中島（中）などがいるが、同一シーズンに複数球団でサヨナラ安打は、若林が初めてになる。 　若林は移籍後８試合目の出場だったが、これが巨人での初Ｖ打だった。（福山　智紀） 　◆４度目で今季初の貯金６　巨人はＤｅＮＡに勝ち、今季初の貯金６とした。今季貯金５で挑んだ試合は 月・　日　スコア　相手　責任 ５・１７　０●２　　広　戸郷 ６・　５　３●４　　ロ　堀田 　　　７　０●２　　オ　戸郷 ７・１２ ３〇２　　Ｄ　大勢 で、過去３度はいずれも敗れていたが、４度目で初めて貯金を６に増やすことに成功した。