じつは「二極化」がすすむ…「トランプラリー」に沸く株式市場にひそむ「大きなリスク」
関税の引き上げは自国を苦しめることにつながりかねない
川崎:関税引き上げに関してはいかがでしょう? 中野さん:関税を引き上げるということは、例えば製造コストが安い中国から製品が入ってこなくなるということです。そうすると、アメリカ国内の企業は自分たちの製品を買ってもらえると思うでしょうが、実際の経済はそう簡単な話ではありません。これまで安価なものを買っていたならば、その価格に慣れてしまうもの。少し値段が上がっただけでも、購入までの抵抗感はあります。 「関税を上げた分だけ物価も上がる」、そう考えるべきです。ということはインフレの可能性が大いに意識されるということです。国内の減税も関税の強化も、どちらもインフレを引きおこす引き金になりかねないと私は考えています。 それにアメリカが関税を強化したら、相手の国も同じことをするでしょう。アメリカだけが関税を上げるのには納得できないですからね。アメリカが関税を強化した分だけ、アメリカの産業は苦しむことになるというブーメランの反作用が働くのです。グローバルな今の常識として関税強化は悪手となっているわけです。 川崎:インフレが起きた場合、アメリカ国内でも厳しい状況になりますね? 中野さん:アメリカのインフレ率は、日本のインフレ率よりも高いです。コロナ禍では一時期10%以上になりました。これは300円だったものが330円になるということ。1つ1つのモノで見れば値上がりの金額自体は少ないですが、生活費全体で見ると、例えば30万円が33万円になることです。その分給料が上がる人は生活にはあまり支障はありませんが、給料が上がらない人もいます。2極化が進んでいるので、インフレはアメリカ国内でも、特に低所得者層には大きな問題で、その総合的な課題がトランプ当選の要因とも言えるでしょう。
日本市場はトランプ氏の当選を歓迎!?
川崎:11月6日の日本市場で日経平均株価は大幅に上がりました。トランプ政権を歓迎しているのでしょうか? 中野さん:トランプ氏はアメリカ国内では減税をする方針なので、市場は歓迎ムードになりました。アメリカでビジネスをしている日本企業も多いですからね。法人税が下がれば、追い風になります。