<変わるセンバツ>/5止 ケガ防止、新様式模索
一人の投手が投げられる球数を1週間500球以内とした球数制限は、公式戦などが対象となる。一方でケガの防止には、ルールが設けられていない日々の練習が重要だ。出場32校の監督アンケートでは「練習での球数を管理している」と答えたのは15校。「管理していない」と答えた学校も、休養日や球数の上限を設けるなど一定の基準を設けていた。 県岐阜商は11月から1月まで「1週間600球」の投げ込みを実施した。鍛治舎巧監督は「試合での球数は500球だが、試合前や試合がない日の練習を含めると600球を超える。それに対応するため」と説明する。1回150球を計4日投じるが、「全力投球」は直球の球速向上を目指した50球のみ。 ケガの予防のために下半身強化にも力を入れ、週3回、山での走り込みを行う。ほとんどの選手が岐阜県出身だが「入学時に130キロにも満たない投手が140キロを超えるようになる」と育成に自信を持つ。 仙台育英(宮城)の須江航監督は「高出力の投球は300球で十分」と考える。300球は球速向上と強く投げる中で制球を身につけるのが目的。土台のフォーム作りはネットスローやシャドーピッチングで、反復動作による疲労が出る下半身強化はウエートトレーニングなどでまかなう。 最速144キロ右腕の松田隆之介(2年)は毎日1時間のネットスローと30分間のシャドーピッチングに取り組み、ひと冬で球速が2キロアップした。「ネットスローで体の使い方を覚えられたおかげ」と効果を実感する。須江監督は「1週間300球でも、試合で100球を超えて球速が急に落ちることもなく、スタミナ不足を感じない」と強調する。育成方法はチームによってさまざまだ。 日本高校野球連盟は2月に「投球制限検証ワーキンググループ」を発足させた。今後、「1週間500球に関する効果と妥当性」や「練習試合、普段の練習に関する障害予防の推進」などを検討する。選手の成長とケガの防止をどう両立させるのか。2年ぶりに開催されるセンバツは、新型コロナウイルス感染対策も含めて高校野球の「新しい様式」の始まりになる。【安田光高】=おわり