イスラム教の影響だろうか。ただし法律で禁止されているわけではない。たとえばこの国にはシャシリクという伝統的な料理があって（トルコのシシケバブの系統だろう）、羊肉、牛肉、鶏肉などの切ったのを調味して金串に刺して焼いたものだが、私が入ったその専門店ではよく冷えたビールも注文できて、すっかりいい気分になった。

が、ほかの店では、しばしばメニューに肉料理があっても酒類がなかった。そのかわりソフトドリンクは豊富で、コカコーラとペプシコーラの両方があったりする。ま、二、三日もすれば慣れてしまうので、それで食事の楽しみが減るということもなかったが。

以上二点、フルーツの愛好と酒類の敬遠。その歴史的由来も明快で、本稿はこれで終わってもいいのだが、しかし正直に言うと、いちばん感情を動かされたのは古都サマルカンドのソフトクリームだった。

いったいにこの国の夏は気温が高く、日ざしが強いので、日没時になると近所の住民がぞろぞろ出て来る。夕涼みの散歩だろうが、子供、子供、子供…その数がほんとうに多いのだ。

いっぺんに街全体が小学校になったようで、その子供たちが、世界中どこにでもあるようなソフトクリーム屋のあかりに吸い寄せられて、たぶん、「ストロベリー味おくれ！　早く！」「こっちが先だ！　チョコレート！」。

私は決して懐古主義者ではないし、現代日本における少子化の問題を後ろ向きに捉える者でもない。だが、それとは別に、（むかしは、日本も）。

涙が出そうになった。どうやら自分たちは途方もなく寂しい国に生きているらしいと思うと、私はいつまでもその騒然たる光景から目が離せなかった。