完売を知らせる紙が掲示されたコメ売り場＝七尾市内

　能登半島地震の被災地でコメが不足している。猛暑による不作や訪日外国人客向けの需要拡大が重なり、石川県を含めて全国的に流通量が減少。これに加え、復興を後押ししようと能登産米を購入する動きが広がり、品薄に拍車がかかっている。価格が上昇して「令和の米騒動」の様相を呈する中、流通関係者からは「新米が出回るまで、もう少しの辛抱だ」との声が上がる。 　「令和5年度産の玄米は完売しました」。七尾市矢田新町にあるJA能登わかばの直売所「JAグリーンわかばの里」では、売り場に欠品を知らせる紙が掲示された。 　同JAによると、直売所では県産米「ひゃくまん穀（ごく）」やコシヒカリの玄米が7月中旬に完売。精米も16日夕の時点で5キロ入りの袋10個を残すのみとなった。 　今年は地震の影響で、これまで取引がなかった県外の業者からの注文が増加。遠方から大型のトラックで訪れ、「能登を応援したい」と大量に購入していくケースもあったという。 　県内では今月下旬にも早生品種の新米が店頭に並ぶ予定で、コメ不足は秋にかけて解消される見通し。JA能登わかばの担当者は消費者に対し「品薄は長くは続かない。今は慌てず、必要な量を買い求めてほしい」と呼び掛けた。 　金沢市内のスーパーなどでも一部の品種で欠品が生じ、中には購入を制限する店もある。マルエー（白山市）ではチラシに掲載する特売品からコメを外しており、担当者は「在庫を切らさないように工夫している」と明かした。 　県産米の精米や卸を手掛ける米心石川（金沢市）によると、今年のコメ消費量は家庭用、飲食店向けの業務用とも前年より4％ほど上昇。パンや麺類が小麦の輸入価格の上昇に伴って高騰する中、コメに切り替える動きが進んだという。 　農林水産省によると、JAグループなどが業者に卸す際の「相対取引価格」は、現在市場に出回っている2023年度産の石川のコシヒカリ（60キロ）が1万5672円、ゆめみづほ（同）が1万4438円で、いずれも22年度と比べて1割ほど高い。 　金沢市の30代会社員女性は、コメの高騰について「毎日食べるご飯の値上がりはつらい」と話した。一方、七尾市内で農業を営む70代の男性は「コメの需要が旺盛なのはいいことだ。販売価格が上がれば生産者の意欲が高まる」と語った。