「朝ドラにBL要素いる?」「国民的ドラマで?」の声も…『虎に翼』への“トンチンカンな意見”に反論
『虎に翼』(NHK総合)を見るまでは、朝ドラを見ることがこれほど有意義だとは思わなかった。毎朝、必ず学びがある。映像作品としても楽しい。 伊藤沙莉扮する主人公によって考え方がアップデート中の視聴者は多いと思う。なのに、第11週第51回まできて、ある場面の描写を安易に「BL」と形容する反応には、ちょっと閉口した。これは反論しておかなければ……。 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、第51回を「BL」と断定することが誤読であり、差別的でもあると思う理由を解説する。
よねが放った一言
もうびっくり。『虎に翼』第10週第50回ラストで、主人公・猪爪寅子(伊藤沙莉)と明律大学で法律を学び、裁判官になった花岡悟(岩田剛典)が餓死したのである。生真面目な花岡は、闇市で取引される食べ物を拒み、極度の栄養失調になった。 食料管理法を担当していた裁判官の死に多くの人々が衝撃を受けた。一番心を痛めたのは、学友であり、無二の親友・轟太一(戸塚純貴)だった。第11週第51回、新聞でそれを知った轟は、飲み崩れる。 ぐでんぐでんになって地面に崩折れた轟の元にやってきたのが、山田よね(土居志央梨)。轟とは学生時代に歪みあってばかりいた意外な人物の再登場だが、さらに意外なのは、よねが働いていたカフェでの会話内容だ。階段に座る轟に、よねが放った一言とは。
セクシュアリティの曖昧さが描かれる意味
「惚れてたんだろ、花岡に」 そう言われた轟は、「何を馬鹿なことを言ってんだよ」とやや声を荒げる。よねは素直に詫びるのだが、轟が重い口をひらく。「俺にもよくわからない」と。轟は確かに花岡に「惚れてた」。でもだからと言って、その時点で自らの性的指向を自認しているわけではない。 ここにきて、轟のセクシュアリティの曖昧さが描かれる意味。それを読み解く前に、この場面に対するネット上での反応を確認しておきたい。正直、目も当てられないものばかりなのだけれど……。 「朝ドラにBL要素?」や「国民的ドラマでBL?」という疑問は、一見素朴な響きだが、いや、これは誤読が過ぎる。寅子に対してズレまくった了見を提示する法学者・穂高重親(小林薫)以上にトンチンカンな見方だと思う。