低リスク「胸キュン映画」は飽和状態 少女漫画の実写化の次に来るのは何?
以前は「少女コミック原作はヒットしない」と言われていた
そもそも少女向けコミックの実写化というのは、2000年半ばまでは映画関係者の間では「ヒットしないジャンル」という認識があり、誰も見向きをしなかったという。 「そんななか、少女向けコミックの実写化の流れを作ったのが2005年に公開された『NANA』だったんです」と濱名氏は語る。実は、この作品をプロデュースしたのが濱名氏だったという。 「それまでも少女コミックの実写化作品は数本あったのですが、良い結果を残していなかったんです。『NANA』も1巻当たり200万部を超えるほどの人気コミックでしたが、映像化の権利は誰も抑えていなかった。でも蓋をあければ40億を超える興収をあげました。続けてTBSが『花より男子』をテレビドラマ化し、映画でも大成功しました。この業界は、ダメだと言われればやらないし、当たればみんな飛びつく。そこからは日本映画のスタンダードジャンルとして確立されていったんです」
メインキャストが似てしまうというジレンマ
そして現在、前述したように、費用対効果という観点から、少女コミックを中心とした“胸キュン”ストーリーは乱立していくようになったという。さらに、もう一つの特徴として「キャスティングの類似性」があげられる。 「もちろんジレンマはあります。基本的に10代がメインの話であり、例外はありますが、許容範囲として20代前半ぐらいまでの俳優ということになります。そのなかで『この人はいいな』と思う人って一握りなので、キャスティングは非常に難しい」と濱名氏は語る。 こうしたなか、「3月に公開された『ひるなかの流星』はいろいろな意味で勉強になった作品です。原作は若い女子には人気がありましたが、国民的大ヒットコミックというわけではなく、永野芽郁さんや白濱亜嵐さんも当時は映画出演作も多くはありませんでした。作品の出来の良さという部分はもちろんですが、いろいろな要素が絡みあってヒットになりました」と賞賛する。 「作品の出来」という意味では「“胸キュン映画”というのは、人によって評価が大きく変わる傾向がある。映画的に良い作品であるかというより、登場人物の心情がリアルに描かれ、いかに感情移入できるか、感動できるかでヒットが決まるんだと思います」と分析。