「自社だけの手柄のような書き方は傲慢」 「自民裏金で新聞協会賞」朝日新聞の“自画自賛記事”にOBもため息
新聞記者なら一度は取ってみたいのが日本新聞協会の新聞協会賞(ニュース部門)だろう。2024年度の受賞は2件で、トップに記されたのが、朝日新聞の報じた〈自民党派閥の裏金問題をめぐる一連のスクープと関連報道〉だ。授賞理由として挙げたのが、安倍派による議員への裏金還流をスクープしたこと、他派閥も同様の裏金を作っていた事実を多角的に掘り下げた点が、派閥解体や政治資金規正法の改正など政治の流れに大きな影響を及ぼしたこと、である。 【実際の紙面】まるで「朝日だけの手柄」みたい…傲慢すぎる“自画自賛記事”を見る
日本新聞協会に聞くと、 「新聞協会賞の審査は協会に加盟する新聞、通信、テレビが報じたものを、各社が7月1日までに申請するところから始まります。今年度の審査対象は23社29件。専門審査委員会、選考分科会と絞られ、最後に選考委員会で決定となる。選考メンバーに報道の当事者となる会社は入れません」(広報担当者)
赤旗への言及は“たった3行”
報道機関にとってはこのうえない名誉で、朝日も受賞が決まった日の翌日(9月5日)の朝刊で1面と6、7面を使って、大きく自画自賛してみせた。 ところが、この受賞のニュース、朝日OBからの評判は決してよろしくない。それもそのはず、裏金問題は「しんぶん赤旗」の22年11月6日のスクープが発端だったし、それを受けて上脇博之氏(神戸学院大学教授)が告発したことをきっかけに広く知られるようになったからだ。 朝日が積極的に報道し始めたのは、検察庁が動き出した後。なのに、受賞を報じた記事で赤旗についての言及は3行だけ。上脇教授は名前も出てこない。 朝日に聞いてみる。 「(受賞は)厳正な審議を経て評価をいただいたものと受け止めております。報道の経緯については、『しんぶん赤旗』の報道に基づく告発(最終的に不起訴)が捜査の端緒となったことも含め、紙面でお示ししています」(広報部) ウェブメディア「メディアウオッチ100」でこの件を取り上げた、朝日の元政治部デスク・元社会部デスクの脇正太郎氏が言う。 「他者への敬意が足りないのではないでしょうか。受賞を誇るなら朝日は赤旗や上脇教授の地道な調査をもっと紹介するべきでしたし、裏金事件は、他紙も繰り返し報じています。自社だけの手柄のような書き方は傲慢(ごうまん)です。また、取材が東京地検特捜部に引きずられていたような印象を残したのも残念です」 「週刊新潮」2024年9月19日号 掲載
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