生命保険よりも「早死にしない家」を残すほうが、家族にとっての資産価値が断然高い理由
● 生命保険に入っても意味がなかった 筆者が心底感じた理由 筆者は大学を卒業して働き始めたときに、生命保険に入った。生命保険会社に入った大学の友人から勧誘されたからだが、まったくもって意味がなかったと今では思っている。自分の生活や資産を守るための最も効果的な方法に行きついたからだ。どんな自宅を選ぶかと、住宅ローンをどうやり繰りするかにその論点は変わる。 生命保険に意味がなかった理由はいくつかある。 1つ目は、人間は60歳までほぼ亡くならないという事実だ。「万が一」と言うこともあるが、厚生労働省の簡易生命表令和4年によると、0歳が49歳までに亡くなる確率は男性3%、女性2%だ。50歳から59歳でも同じ比率でしかない。つまり、人が50代までに亡くなる確率は至って低い。死を意識するのは、高齢者になってからとなる。 2つ目は、自分が結婚するまで保険金の受け取りが親になっていたことだ。相続対策において最も悲しいのは、子どもが先に亡くなることだと聞いたことがある。結婚していない子どもの資産は親に相続されることになる。親が自分の資産を子どもに相続しようと考えている際に、子どもから資産が来てしまう悲しみは察するに余りある。 3つ目は、結婚と同時に自宅を購入したことだ。その際に住宅ローンを組んだが、団体信用生命保険(以降、団信)という生命保険にも同時に入ることになる。この保険は、ローン返済者が亡くなった場合に返済が全額免除される制度なので、生命保険と同じ意味合いになる。つまり、自分が死んだら住宅ローンを返済せずに、ずっと自宅に住み続ける権利を家族が得られるのだ。住宅ローンは若いときほど残債が多いので、返済負担は楽になるが、自分が死亡する確率は低い。家を購入したのなら、生命保険を掛け捨てのように払う必要などなかったと思っている。
● 「団信」が生命保険の代わりに むしろ自宅の資産性を重視すべき 前述の3つの理由から、生命保険に入るなら自分に家族ができたときにすべきであり、その際に自宅を買うなら、団信がその役目を果たしてくれることになるということだ。しかし、ここまでは誰でも解説できそうなよくある話かもしれない。 そこで、家族への資産の残し方まで考えておくといい。自宅は資産性があった方がいい。つまり、資産価値が上がる物件を買おうという話だ。その意味で言うと、都市圏に住む人であれば、戸建よりもマンションの方が資産性は圧倒的に高い。マンション価格は全国で2013年以降1.8倍以上値上がりし、それに対して戸建の値上がりは1.2倍に過ぎない。それも好立地(都心・駅近)のタワーマンションを買う方が資産性が高いことは、過去のデータから分析した結果を何度も公開してきた。 購入にはタイミングも大事になる。マンション価格が上がっているのは、需給バランスなどではなく、これまでの金融緩和によるところが大きい。デフレ脱却のために行われた金融緩和で、政府が必要以上にお金を市中にバラまいたので、それを多額に借りた不動産事業者がこぞってマンション用地価格を高騰させてきた。この度17年ぶりに利上げに踏み切った日銀ではあるが、資金量は当面減りそうにない。 こうした世の中の仕組みがわかっていれば、多くの人は自宅購入で資産を増やせただろう。現に、筆者が主宰する無料会員制サイト「住まいサーフィン」では、会員の自宅査定結果が24万件に及び、その含み益は平均3000万円を超えている。筆者当初から家族構成に準じて住み替えを推奨し、子どもが巣立ったら専有面積をダウンサイズすることを提案してきた。この面積減少分も含めると、さらなる益出しが可能になる。売却しないとこの含み益は含み益のままでしかない。 子どもが巣立った後の家をエンプティネスト(空の巣)と言うが、子どもが出て行った後に引っ越す先が「終の棲家」になる可能性が高い。そこでは考えなければならないことがある。それが、先ほどの60歳以降の死亡率の増加だ。その時点では、余命は20数年になっている。無理できない老体には冬寒い家は堪える。