超音波検査のメリットは臓器の動きや血流を動画でチェックできること【ワンニャンのSOS】
【ワンニャンのSOS】#92 先週のX線検査に続いて今回は、超音波検査についてお話しします。飼い主さんも人間ドックなどで受けたことがあるでしょう。動物にもとても役立つ検査です。 【写真】がん治療で泣く泣く手放した愛犬と…寛解したカナダ人男性、2年ぶり感動の再会に涙、涙 動物病院では、心臓の血液循環を確認するのが典型的な使い方だと思いますが、当院ではもっと広く使用しています。特に腹部のチェックです。超音波は静止画ではなく動画で診られるので、臓器や腸の状態把握と同時にそれぞれの動きも確認できるのが、一番のメリットで、X線との大きな違いです。 たとえば腫瘍ができると、それを養う血管ができます。その血管の有無や血流の方向が分かり、その血流の強さが分かれば、増殖の度合いをある程度予測できるのは便利です。 呼吸が荒く、聴診で心臓の雑音が確認されたら超音波で肺や心臓を調べます。心臓の弁の開閉や逆流なども確認できるのが一つ。また、肺水腫で肺に水がたまっていることが疑われたとき、超音波で貯留部位を特定。そこを標的に水を抜く治療ができるのです。 心臓の診察では、動脈血と静脈血が色分けされて表示されるため、血液の貯留や流れを確認できるし、血流量の測定も可能。それによって心臓弁膜症や狭窄による逆流や拍出量のチェックになるため、症状の程度を認識できるのです。 ■立っている状態かお座りで では、超音波検査をどうやってワンちゃんなどに行うか。一般にはあおむけや横向きに寝かせることが多いと思いますが、当院では普通に四つ足で立っている状態かお座りです。 この体勢はワンちゃんなどにとって自然の状態ですから、ストレスがありません。さらに飼い主さんになでてもらったり、声かけしてもらったりすると、より一層落ち着きます。そうやってスタッフが、超音波を発するプローブを当てる部分を軽く持ち上げてくれればしっかりと不動化でき、きれいな画像を得られるのです。 ちなみにあおむけだと、臓器や腸などもそれぞれの重さで背中側に下がりやすくなります。そうすると、たとえば腹水がたまっていても、分散しがちの画像になる欠点もあるのです。立っている状態での画像なら、その欠点を克服でき、圧倒的に診断しやすい。 ただし、あおむけ状態での撮影画像と上下が逆になるため、慣れないと違和感があるかもしれませんが、繰り返しているうちに問題なく診断できるようになります。若い獣医師さんはむしろ四つ足での撮影を習熟すべきでしょう。 超音波検査は動物目線で行えば負担を与えることなく、有用な情報が得られる検査ですから、触診などの延長線上に位置づけて、もっと役立ててほしい検査といえます。 (カーター動物病院・片岡重明院長)