「スパイ天国」日本、諜報活動の実態とは 『背乗り』著者・竹内明氏に聞く
――本の中の具体的なやりとりは確かに諜報活動の応酬だったと思うんですが、バックグラウンドには日中間の大きな国家関係というのを描いてらっしゃると思うんですが。 竹内:そうですね、ええ。 ――竹内さんがご覧になって、現在、日本と中国が抱えているその一番大きな課題、そしてそれは、その本を通じてどういうことを描こうとされていらっしゃったのでしょうか。 竹内:僕が一番描きたかったのは、この中に出てくる黒崎という外務大臣が出てくるんですけれども、この人物はこれまでにない対中外交を展開しようとするんですよね。それは人権外交、民主化支援外交というものなんですけれども、つまり中国の、まあ中国と今、領土問題でばちばちぶつかり合ってますけれども、果たしてそれだけでいいのかなと。そういう、自国の国益を追求することは大事なんだけれども、中国に対して、例えば民主化を促すような外交っていうのをやってみたらどうだろうかと。 それがこの中に出てくる、黒崎が実際に中国から民主化の活動家をやっている人たちを飯倉公館に招いて、議論をするという場面もあるんですけれども、そういった、要するに世界の先進国と共通の利益のある対中外交というのもやってもいいのかなと思うんですよね。 例えばアメリカのヒラリー・クリントン前国務長官なんかは、中国に訪問すると必ず大物の民主化活動家を招いて、実際に意見交換をわざとやったりですね。あと、ドイツのメルケルさんもそうですね。この前7月に中国訪問しましたけれども、そこでも必ず中国の国内の人権問題っていうのを前面に押し出す。そういった、なんて言うんですかね、先進国と連携しながら中国と向き合う外交というのも、これからの日本の外交にはあってもいいんじゃないのかなという思いでこの黒崎という外務大臣のキャラクターを設定したんですけれども、非常にそこがまた、終盤にあたって謎を解き明かす鍵にもなってくるんですが。そこにちょっと、ある意味私の外交観というか、僕、外務省の担当の記者もやってたんで、そういうものを盛り込んでみようかなというのもありますね。