初詣の前に詳しくなる「教養としての日本の神様」 ビジネスに関わりのある神様を一気に紹介
■製鉄の神様=金山毘古神(かなやまびこのかみ)、金山毘売神(かなやまびめのかみ) 『古事記』によると、火の神である火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)を生んだ伊耶那美命(いざなみのみこと)が陰部を火傷して苦しみ、嘔吐した嘔吐物から生じたのが金山毘古神と金山毘売神で、夫婦神とされています。 嘔吐物が、溶けた鉱石に見た目が似ているためにできた神話とみられており、鉄鉱や鉱山の神として人々に崇められてきました。『古事記』では金山毘古神、『日本書紀』では金山彦神と記されています。金山毘売神は『日本書紀』には登場しません。
金山毘古神を祀る南宮大社(岐阜県垂井町)は全国に約3000社ある金山神社の総本宮で、中世以降に奉納された名工による刀剣が伝えられ、国指定重要文化財に指定されています。 南宮大社で毎年11月に行われる金山大祭は通称「鞴(ふいご)祭り」と呼ばれ、オレンジ色に焼けた鋼を奉行3人が鎚(つち)で叩く鍛錬式が行われます。全国の金属業関係者が商売繁盛や事業の安全を願って参拝しています。鍬や鋤などの金属製品を取り付けた「金物絵馬」が全国から奉納されているほか、機械メーカーによるエンジンや歯車、車のマフラーなども捧げられて、製鉄の神として集める信仰の篤さが伝わってきます。
■医療の神様=少名毘古那神(すくなびこなのかみ) 『日本書紀』に、人や動物の病気の治療法や、鳥獣や昆虫による災いを防ぐためのまじないを定め、「人々は今に至るまでその恩恵を受けている」と書かれていることから、医療の神様として崇められるようになったと考えられます。 『古事記』では少名毘古那神、『日本書紀』では少彦名命と記されています。大国主神(おおくにぬしのかみ)とともに国造りをした、非常に小さな姿をした神です。
『伊予国風土記』では、少名毘古那神が病に臥したため、大穴持命(おおあなもちのみこと=大国主神の別名)が別府の温泉の湯を伊予(愛媛県)へ引いて湯浴みをさせたところ快癒したとあり、道後温泉(愛媛県松山市)の由来とされています。 また、少名毘古那神は酒の神ともいわれており、まじないや温泉、酒など医療に関わると考えられていたものの全般の神とされています。 少彦名神社(大阪市)は、16世紀後半の豊臣秀吉の時代から薬種取引の場として関係業者が集まった大阪の道修町(どしょうまち)にあります。「日本医薬総鎮守」「病気平癒・健康成就の社」をうたい、少彦名命と、古代中国で医薬を広めた炎帝神農を祭神として祀っています。