「私が政権を握れば」…民間人キム・ゴンヒ女史の「大統領なりきり」は続く
「自殺予防のために手すりの高さを上げるなどの措置をしたが、現場に来てみると、まだ不備な点が多い。漢江(ハンガン)大橋の事例のように構造物の設置などさらなる改善が必要だ」 まるで大統領や行政安全部長官の現場指示事項のようだが、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領夫人のキム・ゴンヒ女史の発言だ。キム女史は10日、非公開でソウル市119特殊救助団トゥクソム水難救助隊、漢江警察隊望遠治安センター、龍江(ヨンガン)地区隊を訪ね現場を視察したうえ、勤務者を激励した。「世界自殺予防の日」を迎えての日程だった。 大統領室が公開したキム女史の発言には、大統領夫人が通常行う激励のレベルを超えたものがあちこちで現れている。 「キム女史は『管制センターが最も重要な場所の一つだとし、常に注意を払って先制的に対応してほしい』と述べた」 「キム女史は『今後も問題を最もよく知っている現場の声に常に耳を傾ける』と述べた」 キム女史は7月11日(現地時間)、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議をきっかけに米国で脱北民たちと面会し、北朝鮮の人権問題について話し合った。キム女史はこの場で「私と韓国政府が最後まで共にする」、「韓国政府は歴代のどの政権よりも北朝鮮の人権改善に強い意志を持っており、苦しんでいる北朝鮮住民を決して無視しない」など、本人が大韓民国政府を代弁するような態度を示した。 キム女史は昨年4月にも拉致被害者・抑留者家族と面会し、「政府が国際社会とともに努力しなければならない」、「こういう問題については北朝鮮に対し強い態度で臨まなければならない」と発言したという報道も出た。 大統領夫人は民間人だ。何の公的地位もない。南北実務会談などで細心の注意を払って取り上げなければならない事案を、権限はもちろん専門性もないキム女史が「強硬対応」まで求めたわけだ。 「私が政権を握れば…」 2022年1月に公開された(ユーチューブチャンネル)「ソウルの声」の録音記録の中で、「私が政権を握れば」と語るキム女史の発言は物議を醸した。単なる失言ではなかったようだ。キム女史が自分を大統領と勘違いするような態度は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領就任後にも確認できる。例えば、2022年9月のチェ・ジェヨン牧師との会話の一幕だ。 「この地位にいるからの話ですが、客観的に政治はすべて悪いと思います…実際に大統領になってみると、左か右かといった問題よりは、本当に国民のことを先に考えるようになります。この地位がそうさせるのです」 大統領の地位と「大統領夫人」の地位を混同するような態度が、ディオールバッグの受け取りと共にさらに大きな波紋を広げた。また「私に対する(関心が)ある程度薄れてきたら、南北問題にも積極的に乗り出すつもりだ」とまで語った。 1月、キム女史は与党「国民の力」のハン・ドンフン非常対策委員長(当時)にテレグラムのメッセージを送った。 「大統領と私の特検問題でご迷惑をおかけしたようですが、私が代わりにお詫びします」 過去、多くの大統領が自分の家族問題について謝罪する際、このような態度を取った。尹大統領を押しのけてキム女史が出て与党の非常対策委員長に謝罪の意を伝えたことは、「大統領夫君尹錫悦」のイメージをより一層固めた。 キム女史が公務員を指揮するような姿や政治的発言をすることはよくある。野党「共に民主党」のパク・チウォン議員が9日、対政府質問で「キム・ゴンヒ大統領、大統領夫君尹錫悦」と批判したのもそのためだ。昨年1月、パク議員は「静かな内助」の約束を破り、キム女史が大々的に対外活動を行っていると指摘し、「大統領夫人ではなく大統領になりきっている」とみた。 キム女史の「大統領なりきり」が物議を醸すたびに、経歴詐称疑惑でカメラの前に立った場面が取り上げられる。2021年12月、経歴詐称疑惑で夫の支持率が急激に落ち込んだことを受け、結局国民に謝罪をした。 「過去の過ちを深く反省し、国民の目線に背かないように細心の注意を払います…そして、夫が大統領になっても妻の役目のみ充実に果たします。どうか怒りをおさめてください」 キム女史は本人と関連する事件や疑惑が浮上するたびに何の説明もなく数カ月間外部活動を休止し、時間が経てば別途の説明もなく対外活動を再開する姿を繰り返し見せている。キム女史を「管理」する第2付属室の設置は工事を理由に見送られている。 キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )