羽生、世界最高更新の裏に満点演技力
史上初の大会3連覇を狙う羽生結弦(21歳、ANA)が、バルセロナ、GPファイナルの舞台でまた自らがNHK杯で作った世界歴代最高得点を更新した。現地間10日(日本時間11日)に行われたSPで、冒頭の4回転サルコウ、4回転トゥループ+3回転トゥループの連続ジャンプに成功、すべてをノーミスでまとめて「110.95点」を叩き出してトップに立った。NHK杯の「106.33点」を上回った理由は、ジャンプの出来栄え点(GOE)の加点と、演技構成点(5コンポーネンツ)のアップだ。 4回転サルコウと、4回転の連続ジャンプの2つの出来栄え点は、満点の「3.00」がついた。演技構成点の「Performance / Execution」の項目では、なんと10点満点を獲得した。演技構成点は9人のジャッジが判断するが、9人中8人が満点の10点をつけた(公平を期すために抽選で7人、その最高と最低を切り捨て、残り5人の平均に係数をかける)。 この10点満点をとったパフォーマンスについての採点基準は「音楽の振り付けの意図をスケーターが氷上で移し替える際に、体の動き、感情の表現、知性の表出が十分であること、よって評価する際は、体の動き、感情の表現、身のこなし、スタイルと個性、動作の明確さ、多様性とめりはり、投射などを考慮して採点すること」と、されている。 つまり、ショパン作曲の「バラード第1番」と、羽生の心技体が見事にシンクロし、美しい芸術作品として氷上で表現されたとみなされたのだ。 またルールブックには、10点満点をつけるガイドラインして「卓越、歴史に残る名演技、スタンディングオベーションが沸き起こる演技、スケーターと音楽がまさにひとつになる」などとある。まさに羽生は歴史に残る名演技をしたと評価されたのだ。 どちらかと言えば、21歳の羽生はスポーティーな技術点が高く評価され、演技力、表現力については、パトリック・チャンらに比べて足りないとされていた。負けず嫌いの羽生自身が、追いつき追い越せと課題にあげていた部分だが、技術だけでなく演技力も、もう誰も追いつかないレベルであることを見せ付けた。