『ヒップな生活革命』著者に聞く、米国のライフスタイルの変化と日本の消費社会の行方
日本でも『ヒップな生活革命』は起きる?
──この傾向に気づかれたのは具体的にいつ頃ですか? はっきり気がつくまでにも、家庭菜園をしてコストを下げたり、食事に気を遣っていた人はいましたが、自分の周りだけでなく、ムーブメントと呼べるくらいに社会現象として広がっているのかなと気がついたのは2012年頃です。2008年と2012年にアメリカを一周した時では、2012年の時の方が、アメリカ全体で食べ物についての考え方が確実に変わっていました。 例えば、周りに何もないところにあるガソリンスタンドにエスプレッソマシーンが置いてあったり、都会に住んでいた友人がモンタナのような田舎で農園を始めたり、至る所でもそういう人たちが増えてきているということでした。以前は、大企業主義のメインストリームカルチャーがあり、かなり大規模のマネーゲームのようなものがありましたが、リーマンショックをきっかけに職を失う人が出てきて、その中でもっと地に足を着いた暮らしをしようとか買い物をしようという人たちが出てきました。近所の少量生産の食料品店でも、リーマンショックをきっかけに始めたという人もいます。 ──日本でも『ヒップな生活革命』は起きるのでしょうか? 今まではアメリカも日本もトップダウンで、すごく大きな資本がないとお店がやりづらいことがあったと思うんです。でもよく見てみると、中目黒や代官山には小さくて良いお店がたくさんあります。例えば日本人のデザイナーも商社などを通さずに海外のトレードショーなどに出展する例は増えてきていますし、もう少しDIYっぽいやり方ができるのではないか、と考え始める人が増えてきていると思います。 そこにはFacebookやtwitterといったSNSの存在も大きくて、自分のターゲットと繋がる方法が増えているので、お金が少なくても小さな形で発信ができる。そうすると草の根レベルでちゃんと物を作る人が生まれる土壌はできてきます。結局は草の根レベルでやっている人たちがいなければムーブメントにはなりません。アメリカでもメインストリームのカルチャーががっつり変化したわけではなくて、小さくやっていた人たちが評価され、生活できるようになってきたということです。 最近は、日本の若い子たちがポートランドにいってサードウェーブコーヒーのお店で豆のロースト方法などを学び、日本で小さなカフェを開いたという話もよく聞きます。今までの日本のカルチャーで難しかった点は、文化形成がトップダウンだったということです。みんながボトムアップという形で参加者意識を持つこと。消費者もそういう意識を持つことが大切だし、作る側も例えば投資家にお金を出してもらうのではなくて、自分のできる範囲で着実なやり方でやれば、もっと文化的な根っこが生まれてくるのではないかと思います。そしてその動きは日本でも実際に始まっている気がします。