絶頂の転職エージェントが衰退する致命的構造 転職活動者にはおおむね好評でも気になる批判の声
「前回の転職まではエージェントを利用していましたが、今回は自分で行きたい会社を探し、自分で会社に直接アプローチし、転職しました。採用担当者は、私の熱意と行動力を高く評価していました。あと『手数料が浮いて万々歳です』と正直に言っていました(笑)」(40代男性) 企業も、手数料負担の増加を受けて、エージェントを通さない低コストの採用方法を模索するでしょう。近年、転職サイトが充実してきて、「エージェント外し」の環境が整いつつあります。
「エージェントへの手数料の削減が課題になっており、リファーラル採用などさまざまな採用方法を試しています。また、昔と変わらない人海戦術の採用活動をしており、AIの活用など採用プロセスを合理化する余地も大きいと思っています」(素材) リファーラル採用とは、自社の従業員に採用候補者を紹介してもらう採用方法です。採用コストを抑制できることや候補者の質や信頼性が確保しやすいことなどがメリットです。ただし、大量数を採用しにくいという限界があります。
■採用活動も転職活動も大きく変わる さらに、企業側が「採りたい人材」とエージェントが「紹介する人材」にミスマッチがあるのでは、というエージェントの存在意義を揺るがす指摘がありました。 「当社は、食品を深く愛し、食品ビジネスの課題に使命感を持って取り組むリーダーを求めています。しかし、エージェントから紹介される候補者は、業種に関係なく少しでも年収が多い会社に転職したいという人ばかりです。エージェントの担当者はよく動いてくれていますが、根本的なボタンの掛け違いがあるように感じています」(食品)
今回の取材で筆者が最も印象に残ったのは、現在の採用活動が「エージェントにおんぶに抱っこ」になっていると反省した、次の弁です。 「私たち採用担当者は、二言目には『企業は人なり』と言います。しかし、実際にはエージェントから紹介された応募者の品定めをしているに過ぎず、企業に必要な人材を主体的に採用することはできていません。採用活動を抜本的に見直す時期に来ていると思います」(輸送機) 企業が中途採用の方法を見直せば、転職エージェントのあり方が変わりますし、何より社会人の転職活動が変わるでしょう。今年は、企業の採用活動や社会人の転職活動、ひいては働き方が大きく変わる、転機の一年になるかもしれません。
日沖 健 :経営コンサルタント