矢野 海翔

今年のドラフトで6人同時指名を達成した「最強育成球団」徳島インディゴソックス（四国アイランドリーグplus）の新入団選手が発表された。 今年の徳島には、155キロ右腕の工藤 泰成投手（明桜-東京国際大）や191センチの大型右腕・篠崎 国忠投手（修徳）らの評判が高い選手の入団が決まっていたが、今回はなんと今年のU-18日本代表選手が加入することになった。 【動画】U-18代表、ポジション別で選手を解説 矢野 海翔投手（大垣日大）。高校日本代表が高校を卒業して直接独立リーグに入団するのは初めてのことである。世代トップチームの選手が独立リーグを選ぶ時代になったのだ。 矢野は左サイドから130キロ中盤の速球、スライダー、チェンジアップで翻弄する技巧派。2年秋まではオーバースローだったが、阪口慶三監督（今季で勇退）の薦めでサイドスローへ変更した。これがハマり、この夏の岐阜大会では好リリーフを見せ、優勝に貢献。甲子園では近江戦で3.1回無失点の好投をみせた。この試合の投球が評価される形になり、高校日本代表へ選出されたのである。 今年のU-18といえば、初のワールドカップ大会優勝を果たした強力なチーム。メンバーの進路は豪華で、ソフトバンク1位の前田 悠伍投手（大阪桐蔭）をはじめとして、5人がNPB指名を受けている。さらに、髙橋 煌稀投手、尾形樹人捕手の仙台育英バッテリーが早稲田大へ進学。チームメイトが軒並みNPB・強豪大学に進む中、矢野は徳島入団を決めた。 なぜ矢野は徳島を選んだのか。今回のU-18代表で、トップレベルの選手とプレーするうちに、プロになりたい気持ちが沸いてきたという。そしてドラフト会議が終わって、6人同時指名を達成した徳島の凄さを目の当たりにすると、直ぐに行動に移した矢野は球団事務所に電話して、入団の希望を伝えた。 「高校1年生の時に独立の徳島という存在を知って、そこから毎年プロを輩出しているため凄い球団なんだなとずっと思っていました。特に、投手が毎年のように指名されるため自分もここで学びたいと思い自分からアポイントを取りました」（矢野） 特に徳島のエースとして活躍し、現在は巨人でプレーする戸田 懐生投手（KTCおおぞら高等学院）の存在は大きかった。 「徳島から巨人に行った戸田投手が自分と同じぐらいの体格なのに150キロを投げる。それを見て徳島に行けば何かが変わるんではないかと思いより徳島に行きたいという気持ちが強くなった」 徳島の南啓介社長はこう語る。 「甲子園、U-18と経験もした上で自分で色々調べ、独立リーグの徳島球団に入りたいと自らの意思で伝えてくれたことが獲得に至った一番の理由です。 彼の独立リーグを経てNPBに行きたいという思いとビジョンに共感できました。 まずは体づくりをしっかりする時間を確保し、強度な練習に耐えられる身体を手に入れてもらいたいと思います」 矢野が改めて抱負を語ってくれた。 「独立は1年1年が勝負。常にNPBのスカウトが試合を見てきてくださっているので、自分をアピールする時間が毎日ある。 プロに行くためにはスカウトの皆さんに強烈なインパクトを与えないといけないため、1日1日が大切になる。今よりももっと緊張感がある生活になりますが、徳島は自分自身のスキルの向上を含めて素晴らしい環境だと思っています」 徳島ISの躍進を象徴する矢野の入団。独立リーグの発展が日本球界の裾野を確実に広げて いる。