中国が望む勝者、不確実性のトランプ氏より継続性のハリス氏か
(ブルームバーグ): 中国はどちらの米大統領候補にも熱狂しているわけではないが、北京で交わされている会話からは、予測不可能な共和党候補のトランプ前大統領より、現政権からの継続性のある民主党候補のハリス副大統領の方が、明らかに好まれているとうかがえる。
台湾、南シナ海、バイデン大統領による先端半導体やその他の技術の輸出規制などの問題で大きな対立は続いているものの、米中関係はこの1年安定している。その大きな要因となったのは、中国の王毅外相とサリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の地道な定期会談だ。
中国は米国との関係を、良好とは言えないが、数年前に比べればましだと思っている。そのころはペロシ下院議長(当時)の台湾訪問や、米国上空を飛んでいたスパイ気球とされる飛行体の撃墜などがあり、両国間の全ての対話が途絶えた。
その後、ウィーンからバンコクまでさまざまな場所で行われたサリバン氏との対話は、対立を乗り切り、今年後半に行われる見通しのバイデン氏と習近平国家主席の再会談への道を開いた。
過熱した不動産バブルを冷やそうとした結果、デフレ圧力に悩まされ、中国当局者は経済の再生に集中している。そんな中国にとって、ハリス大統領が誕生すれば、習政権もその基盤の上に立ち、ある程度安定した対外環境を保てるようになるだろう。
その戦略に対する大きなリスクの一つが、トランプ氏返り咲きの可能性だ。トランプ氏は中国に60%もの関税を課すと威嚇している。これは米中間の貿易を壊滅させるレベルだ。
人民解放軍の元研究者で、現在は北京のグランドビュー研究所でアメリカ研究ディレクターを務めるチュー・ジュンウェイ氏は「ハリス氏の大統領就任は、少なくとも1-2年の継続性を意味するというのが中国の専門家の一般的な見方だ」とした上で、「トランプ大統領の誕生は、良くも悪くも可能性の幅が広がることを意味し、中国、米国自身とその同盟国、さらには世界全体にとって、多くのサプライズと潜在的なトラブルが発生する可能性がある」と指摘した。