最後のホンダ「ライフ」5代目が103.4万円~デビュー、その後はNシリーズへ進化【今日は何の日?11月6日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、ホンダの軽自動車「ライフ」の5代目が誕生した日だ。ライフの誕生は古く、初代はN360の後継として1971年に誕生したが、その後ホンダは軽事業から一時的に撤退。1997年に2代目が復活、そしてこの5代目が最後のライフとなり、人気のNシリーズにバトンを渡したのだ。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA) ■ホンダ軽の主軸を担ったライフのラストモデル ホンダ5代目ライフの詳しい記事を見る 2008(平成20)年11月6日、ホンダは「ライフ」としては最後の世代となる5代目を発表(発売は翌日)。1997年に復活を果たしたライフは、その後ホンダ軽自動車の主軸として堅調な販売を続けていたが、5代目をもってライフの終焉を迎えた。 初代ライフはヒットしながらも僅か4年で生産終了 初代ライフは、自動車黎明期の1967年にデビューして一世を風靡した「ホンダN360」の2代目に相当する「NIII360」の後継として、1971年に誕生した。 ライフは、ホンダが空冷エンジンから水冷エンジンに切り替えたモデルであり、パワートレインは360cc水冷2気筒SOHCエンジンと4速MTの組み合わせ。全体的に角が取れたソフトでスタイリッシュなスタイリングと優れた性能、静かで広々した室内空間を実現したライフも人気を集めた。 ところが、ホンダは1974年に軽自動車事業の生産から一旦撤退することを英断。これは、米国の厳しい排ガス規制(マスキー法)をクリアしたCVCCエンジン搭載の「シビック」が1972年にデビューして世界的に大ヒット、ホンダの生産・開発ボリュームが追いつかなくなったためである。 小型乗用車の生産を始めたばかりのホンダにとって、人気のシビックとライフの両方の生産を行うことは困難であり、軽自動車でなく収益の大きい小型車を優先したのだ。 11年ぶりに復活したホンダの軽はライフの先代にあたるトゥデイ 小型車の大成功で成長してリソースに余裕ができたホンダは、1985年に「トゥデイ」で軽事業の復活を果たした。ホンダにとって11年ぶりとなった軽のトゥデイは、当時一大ブームとなっていた商用車の軽ボンネットバンだった。軽ボンネットバンとは、1979年にデビューしたスズキの「アルト」が開拓した、軽商用車でありながら乗用車のようなスタイルの軽自動車である。商用車にすることで、物品税が非課税となるので車両価格が下げられるのだ。 1993年にモデルチェンジしてデビューした2代目トゥデイは、先代の軽ボンネットバンから軽乗用車となった。これは、1989年の消費税導入に伴い商用車の物品税が廃止されて、商用車の税制メリットが消失したためだった。 2代目は、女性を意識したお洒落なスタイリングで人気を獲得したが、1998年の軽自動車の規格変更とともに実質的にライフにバトンを渡す形で生産を終えた。 女性に優しい装備とキュートなスタイルが特徴の5代目ライフ トゥデイの後継として1997年に登場した2代目ライフは、初代ライフの生産終了から23年ぶりの復活だった。ところが、2代目ライフは翌1998年の軽自動車の規格変更を受けて、わずか1年余りで3代目に切り替わった。 そして、2003年にモデルチェンジした4代目を経て2008年のこの日、“デイリー・スマイル・テクノロジー”をコンセプトに掲げた5代目ライフがデビューした。 5代目ライフが特にこだわったのは、視界の良さ、快適さ、運転しやすさ、安全性で、女性でも安全かつ快適に運転できることだった。具体的には、三角窓の拡大、リアガラスの下端を下げる、バックモニター付きオーディオの装備、スマートパーキングアシストなど、女性にやさしい装備が採用されたのだ。 またユーザー層の拡大を図るため、シンプルな標準グレードの他、エレガントな「パステル」、スポーティな「ディーバ」を用意し、それぞれ異なるフロントマスクを設定。パワートレインは、660cc直3 SOHCエンジンのNA(無過給)およびそのターボ仕様と4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDが用意された。 車両価格は、標準グレードが103.4万、パステルが114.5万円、ディーバが126万。キュートなスタイリングで比較的女性に人気のあったライフだったが、2014年に実質的な後継車であるNシリーズに引き継ぐ形で生産を終了した。 ・・・・・・・・・ トゥデイ、ライフと続いたホンダの軽自動車づくりの根底には、「M・M思想(Man-Maximum、Mecha-Minimum:人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に)」があった。2つのモデルの熟成と進化が、結果として次のNシリーズの大ヒットにつながったのだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純