整形外科医が教える体メンテナンス(2)肩こりはマッサージでは治らない
デジタル社会につきものの肩こりは、中高年だけでなく20代、30代でも7割以上が経験しているといわれています(日本リカバリー協会2021年調査)。 整形外科の教科書には「肩凝り」という病名は載っていない 腰痛と同様、肩こりの原因もさまざまで、病気が原因の肩こりと病気ではないものとに分けられます。 「肩こりの大部分は検査をしても病気が見つからない肩こりです。病気が原因のものには頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症といった整形外科の病気、さらには心筋梗塞や脳梗塞、肝臓、胆のうなど内臓の病気があります。なお、中高年に多い五十肩(肩関節周囲炎)は、肩こりと混同されやすいのですが、痛みだけでなく手を上げにくくなるのが特徴で、肩関節の病気によるものです」 整形外科専門医の冲永修二氏(東京逓信病院整形外科)はこう話します。 病気ではない肩こりは、頭と肩をつなぐ筋肉の緊張、疲労、循環障害によって起こると考えられており、運動不足や加齢による筋力の衰え、ストレス、目のトラブル、高血圧、糖尿病などがあると起こりやすくなるそうです。 また、同じ姿勢を長時間続けたり、筋肉に負担がかかる姿勢(猫背や前かがみなど)でパソコンやスマホを使ったりするのもリスク要因。日本リカバリー協会の調査でも、デスクワークを7時間以上、スマホを1時間以上使用すると首筋や肩のこりを感じるようになると報告されており、連続使用を避けることが予防につながります。 スマホやパソコン操作時の姿勢が原因とされる“ストレートネック”は、肩こりの原因ともいわれていますが、冲永医師によると、ストレートネックの医学的定義はまだ定まっていないそうです。 「人間の首の骨(頚椎)はC字形にカーブしているのが自然ですが、それがまっすぐになった状態をイメージしてこう呼んでいます。この状態はレントゲン検査をしないと確認できません」 「肩こりは、原因を見つけて適切な治療をすることで改善できます。例えば、高血圧が関連する肩こりは血圧の治療でよくなることが多いのです。パソコンやスマホ使用が原因ならば、操作の合間に首や肩を動かす体操が効果的です」(冲永修二医師) ネットの動画なども参考になりますが、理学療法士などのプロの指導を受けるとコツがつかめて長続きしやすいそうです。 マッサージは筋肉の緊張を和らげ循環を良くするが、効果は一時的なことが多いとのこと。面倒がらず自分で運動した方が効果的だそうです。 「ただし、すべての肩こりに運動が有効とはいえません。中には運動が逆効果の場合もあるからです」(冲永修二医師) 症状によっては安静が必要なこともあるため、自己判断は禁物。運動によりかえって悪化することもありえます。専門医による正しい診断が肩こり解消の早道なのです。 =つづく (医療ジャーナリスト・油井香代子)