7000人診察して見えた、どんな会社にも必ずいる「職場を腐らせる人」の怖すぎる実態
彼らは何を考えているのか
本書の約半分を占めるボリュームの第1章では、「職場を腐らせる人たち」の15の具体例を解説する。 「職場を腐らせる人」といっても「根性論を持ち込む上司」「言われたことしかやらない若手社員」のような、どこの職場にもいそうな人たちから、職場の人間関係を破壊する「不和の種をまく人」、「ストーカー化する人」といった、理解しがたい思考回路によるものもある。言動だけでなく、彼らのおかれた背景を通じてその精神構造と思考回路を分析していくが、ちょっとしたホラーも顔負けに怖いケースも少なくない。たとえば「職場でよくない噂を拡散される」事例には Aさんは一見温厚そうで、いつもにこにこと笑顔なので、つい気を許していろいろ話してしまうのだが、後で自分が言った覚えのないことを「〇〇さんが~と言っていた」と吹聴されていたと知り、驚いたという社員が何人もいたのだ。 というケースもあれば、 この女性と出会い系サイトで知り合って不倫していたと称する男性の妻が、男性の携帯を盗み見て不倫の事実を知り、夜遅くに会社に怒鳴り込んできたところ、残業でただ一人社内に残っていた経理部のお局社員が「当該の社員はもう退職しましたから、当社とは一切関係ありません」と上手に説明して追い返したと、お局社員自身が吹聴しているというのだ。 というように、してもいない不倫の不始末をもっともらしく言いふらされた人もいる。このニつのケースは、表面上の言動は似ているものの、根幹では全く違う心理が働いており、「職場を腐らせる人」たちがそれぞれどのような基準でターゲットを選び、攻撃しているのかを知ることができる。15の事例には「怖い」「理解しがたい」だけでなく、彼らの悪意にいち早く気づき、自分の身を守るためのヒントが詰まっている。
変えることはできないけれど
2章以降では、そんな「職場を腐らせる人」を変えることが困難な理由と、彼らにターゲットにされない方法を説く。優しくまじめな人ほど「根気よく話をすれば、彼らにもわかってもらえるのではないか」と思いがちだが、彼らの心の底にある四つの心理を知れば、それがいかに厄介なことかわかるだろう。 私たちにできることは、彼らのターゲットにされにくい人物像を知り、職場においてはそのようにふるまうことだ。それは少し強気な人物像であるため、「素の自分」がそうなるのは難しいと感じるかもしれない。それなら「職場での顔」と考えてもいい。本書は、今すぐにでもできる「虫よけ」になる対策も教えてくれる。マネできるポイントから始めてみたい。 本書を読むと「職場は仕事をするために行く場所で、採用試験を突破した人の集まりだからまともな人しかいない」というのは大きな勘違いかもしれない……と、背筋が寒くなる。しかし、片田先生のあげる「対策」は、思いのほかシンプルだ。 職場を腐らせる人に対処するうえで何よりも大切なのは、まず気づくことである。 本書は、その気づきにつながるヒントをくれる。それはあなたの身を守る強力な盾になるはずだ。 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。
中野 亜希(ライター)