AMG GTクーペの真相!SLのクーペ版というだけじゃない個性とは?後編【新型車デザイン探訪】
メルセデス-AMGの新型GTクーペは、AMGを名乗るようになった現行SLとプラットフォームやパワートレインを共有する兄弟車。しかしそのデザインはSLのクーペ版という以上の個性をしっかりと備えていた。今回は後編をお届け! 【画像を見る】AMG GTクーペはSLのクーペ版ではない個性とは?※本文中に画像が表示されない場合はこちらをクリック TEXT:千葉 匠(CHIBA Takumi) PHOTO:千葉 匠/Mercedes-Benz Japan
これぞファストバック!ワイドなリヤフェンダーとルーフラインのスピード感
2+2パッケージのために、前席頭上のルーフ頂点から後ろが従来のGTより長くなった。それを活かしてGTクーペは、リトラクタブル・スポイラーを格納した超短いリヤデッキに向けてファストバックのルーフラインを滑らかに、かつスピード感を持って引くことができた。このエクステリアの最大の美点のひとつだ。 従来のGTはルーフサイドがアーチを描いて下降しながら、リヤフェンダー上面から回り込んだ後ろ下がりのリヤデッキ面に融合するというデザイン。面と面が交差するところに折れ線を作らず、すべてを滑らか曲面で包んだのは見事だが、ひとつ惜しいのは、ルーフサイドの稜線がS字を描いていたことだ。 「ファストなバック」であるためには、ルーフサイドの稜線は後端までひとつのカーブで勢いよく引かなくてはいけない。60年代のアメリカ車でファストバックが流行って以来、それが鉄則だ。ひとつの高速コーナーで抜けられるところをS字に切り返したら、勢いが落ちて「ファスト」にならない。 空力のためにリヤピラーの後端を内側に絞らねばならないなど、いろいろな条件のためにルーフサイド稜線がS字を描いてしまう例は実は少なくない。しかしGTクーペはそこを巧く切り抜けた。 テールゲートの開口線のすぐ内側に明確な折れ線を設定。ルーフパネル/ルーフサイドの分割線をこの折れ線につなげながら、ひとつのカーブで勢いのよいラインを引いた。ファストバックという点は従来のGTと同じだが、それが伝統的な鉄則に沿って進化したのだ。