【ロボットサミット】県内の英知結集を(10月31日)
ロボット技術の国際競技会「ワールドロボットサミット」の開催まで1年を切った。会場の一つとなる南相馬市の福島ロボットテストフィールド(ロボテス)では今月、プレ大会が開かれ、県内のチームが準優勝する活躍を見せた。県内の英知を結集して本番に臨み、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災地が磨いた技術力を世界に発信したい。 サミットは2021(令和3)年以来の開催となる。前回もロボテスが会場となり、南相馬市の中小企業などでつくる南相馬ロボット産業協議会が開発した「MISORA」が、災害対応ロボットの標準性能を競う種目で準優勝し、会津大の「REL―UoA」が3位に入賞した。 2025年10月開催の次期サミットは大阪府、愛知県も会場になっており、県内は福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)が主催する。ロボテスで災害現場でのロボットやドローンの活用を想定した4部門の競技を行う。 南相馬ロボット産業協議会はプラント災害部門への出場を目指している。工場を模した会場で計器を読み取って異常を覚知したり、がれきを撤去しながら状況を探査したりするという、より実践的な課題が設けられる。インターネットを通じて状況を報告する「デジタルツイン」への対応も求められる。
協議会は前回のロボットの改良版を製作するとともに、ネット通信技術を得意とする会津大と合同チームを編成した。プレ大会に出場し、6チーム中2位となる好成績を残している。前回よりも高い技術力を要するが、県勢の連携によって上位を狙える手応えを得た。大震災を経験した場所で、命を救う先端技術の進化が実感できるよう、さらに改良を重ねてもらいたい。国際大会での活躍は県内のロボット関連産業全体の活性化につながる。 サミットを成功に導くには、競技者だけでなく、数多くの来場者を集める努力も必要だ。ロボテスや主催者のエフレイへの関心が高まる契機になる。原発事故の被災地の現状や課題に触れ、復興加速の道筋をともに考えてもらうきっかけにもなる。国内外に開催を広く周知する広報戦略も欠かせない。(平田団)