300日がボーダーライン…離婚後、まさかの「妊娠」が発覚!「戸籍・養育費」はどうなる?【弁護士が解説】
さまざまな事情から離婚という決断を下したあと、予想外の「妊娠」が発覚するというケースもあるでしょう。当然、離婚に至るまでは夫婦の関係があるため、妊娠の可能性もあるわけですが、当事者としては、なにから考えればいいのか、立ち止まってしまうのではないのでしょうか。本記事では、離婚後に妊娠が発覚した場合における戸籍、親権や養育費などについてAuthense法律事務所の弁護士白谷英恵氏が解説します。 都道府県「離婚率」ランキング
離婚後の妊娠!親権や戸籍はどうなる?
まず、一番気になるのが、親権や戸籍の問題でしょう。離婚したといっても、生まれてくる子どもの父親は、別れた相手であることが一般的です。離婚しても、前の夫が当然に父親になるのか、それともこちらから頭を下げて認知をしてもらわなければならないのか、非常に重要な事柄でしょう。 そこで、まずは基本的な事項から説明後、さまざまなケースをみていきます。 離婚後の妊娠!親権は母親に 親権については、民法で「子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う」(民法819条3項)と規定されています。 ここで、親権とは、大きく2つにわかれます。 ・財産管理権 子どもの財産を管理し、子どもが単独で行うことのできない法律行為を代わりに行うこと ・身上監護権 子どもと同居し、身の回りの世話などを行うと共に、教育などを行うこと この2つを有する人を親権者といいますが、離婚後に生まれた子どもについては、母親が親権者となります。本来であれば、離婚前に生まれていれば、どちらが親権者になるのかは、当事者の協議で決まりますが、離婚後であれば、母親が親権者であると決められているのです。 ただ、 「子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる」(民法819条3項) との規定もあるので、出生後に話し合いによって、親権者を父親と決めることも可能です。 離婚後の妊娠の場合、戸籍はどうなる? それでは、離婚後に生まれた子どもの戸籍はどうなるのでしょうか。民法には次のような規定があります。 「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」(民法772条2項) 端的にいえば、出産する日により、子どもの戸籍が変わってくるということです。 ・離婚後300日以内に生まれた場合は、前の夫の子どもと推定 ・離婚後300日を超えて生まれた場合は、前の夫の子どもと推定されない つまり、前の夫の子どもと推定されるということは、いまは離婚していますが、当時は結婚していたため、「法律上結婚していた夫婦のあいだでできた子ども(嫡出子)」として、結婚時の戸籍に入ることになります。 たとえば、結婚して妻が夫の戸籍に入っていた場合は、子どもは父親の戸籍に自動的に入ることになります。離婚して、新しく母親が戸籍を作ったとしても、前の夫である父親の戸籍に入ります。 なお、離婚後300日以内に生まれた子でも、なんらかの事情により真実の父ではない場合などは、家庭裁判所に「親子関係不存在確認」の調停を申し立てる必要があります。そこで親子関係がないと判断されれば、母親の戸籍に入ることになります。 また、平成19年5月からは、離婚後300日以内に生まれた子のうち、医師の作成した「懐胎時期に関する証明書」が添付され、推定される妊娠の時期で最も早い日が離婚後であれば、前の夫が父親とはならない出生の届出が可能です。 一方で、離婚後300日を超えて子どもが生まれた場合、再婚していなければ、「法律上結婚していない男女の間でできた子ども(非嫡出子)」として、母親の戸籍に自動的に入ります。事実上、父親が前の夫であったとしても、離婚後300日を超えてしまえば、男性から自分の子どもであるという認知がなければ、法律上では父親が不明となるわけです。 そのため、前の夫の子どもであるという「嫡出子」として、法律上の取り扱いを望むのであれば、前の夫からの認知が必要になります。