ゆっくり着実に正常化、利上げ一切なしではない-田村日銀委員
(ブルームバーグ): 日本銀行の田村直樹審議委員は27日、新たな金融政策の枠組みの下での金融政策運営について、ゆっくりと着実に正常化を進めていく考えを示した。青森県金融経済懇談会で講演し、その後に記者会見した。
田村委員は、18、19日の金融政策決定会合でマイナス金利の解除をはじめとした大規模緩和策の修正を決めたことを「金融政策の正常化への第一歩を踏み出した」と評価。先行きは経済・物価・金融情勢次第としつつ、「ゆっくりと、しかし着実に金融政策の正常化を進め、異例の大規模金融緩和を上手に手じまいしていくために、これからの金融政策の手綱さばきは極めて重要だ」と語った。
政策正常化の最終的なゴールとして、2%の物価安定目標の下で「金利の上げ下げを通じて需要を調整し、物価に影響させるという金利機能が発揮できるような水準まで戻す」ことを想定。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、「当面、緩和的な金融環境が継続する」とも指摘した。
先週の会合では、世界最後となったマイナス金利の解除とともに、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の廃止や上場投資信託(ETF)の新規購入の停止も決めた。市場では年内の追加利上げに対する思惑も広がっているが、タカ派とみられていた田村委員の今回の発言は利上げを急がない姿勢を示したものと受け止められている。
田村氏の発言などを受けて、東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=151円97銭まで下落し、2022年に付けた1990年7月以来の安値(151円95銭)を下回った。
円が対ドルで約34年ぶり安値に下落、断固たる措置取ると財務相
YCCを廃止する一方で従来と同程度の国債買い入れを続け、長期金利の急騰時には機動的に買い入れの増額を実施することについては、「能動的な金融政策手段として用いるのではなく、不連続な変化を避けるため」と説明。金利機能によってビジネスの新陳代謝を促すことや、市場での金利形成が持つシグナリング機能の回復が重要だと主張した。