韓国、台湾も巻き込んでMLBに対抗できるリーグを――「日本球界のマイナーリーグ化」を食い止めるための改革案<SLUGGER>
全28球団のアジア・スーパーリーグを立ち上げる?
NPBがそうなるためにはまず、外国人枠を全面的に撤廃しなければならないし、MLBの10分の1以下とも言われる球団の経営規模の格差を埋めないといけない。さらに球団と地域社会の関係や、貨幣価値の相違、外国人労働者の流入などなど、日米格差解消のための課題は数え切れない。だが、それを解消できない限り、今後も日本から米国へ旅立っていく選手は増え続けるのみである。 日本だけでは心許ないのなら、世界的な企業も多い=経済力のある韓国(KBO)や台湾(CPBL)を巻き込んで、全28球団のアジア・スーパーリーグみたいなものを新たに立ち上げて、MLBに匹敵する経済規模のリーグを作ったっていい。そうなると、「日本一」や「セ・リーグ優勝」という枠組みが問題になるだろうけれど、我々日本人なら伝統を崩さず、MLBと比肩できるような国際的なリーグにすることは可能なのではないか。 野茂英雄の時代には「メジャー挑戦」と言われていたことが、もはや「メジャー移籍」と言われるような昨今である。ならば、いつまで経っても「日本プロ野球がメジャーリーグのファーム組織化している」と嘆くのではなく、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーや、MLB各球団のオーナーが、「なに考えてんだ、日本人? あいつらヤバくね?」と思わせるぐらいの画期的な変革を断行すべきなんじゃないのかーー。 そんな風に物思いに耽っているところに、35歳の菅野智之投手が、単年1300万ドル(約19億5000万円)でオリオールズに移籍したというニュースが飛び込んできた。 立場も実績も状況も大違いなので、栄転したような感じになっており、佐々木や上沢の時のような反応とは当然、大違いなのだが、「主力選手が他球団に移籍する」という現象は同じじゃないかなと思う。なぜなら、稚拙なポスティング容認も、アメリカからで戻ってからのFA移籍も、35歳の海外移籍も、本質的には同じ構造上の問題=「日米のプロ野球リーグ間に埋めようのない格差がある」からこそ起こったのだから。 もしも、日本にMLBに匹敵する経済規模のリーグが存在したのなら、菅野はかつてあんなに入団を熱望した巨人を後にしてまで、オリオールズに移籍していたのだろうか。 そう思わずにはいられない、2024年の年の瀬なのである――。 ●ナガオ勝司 【著者プロフィール】 シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
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