傷を治す「人工タンパク質」が買える時代に!? 京都大学の革新的な開発に期待高まる
慢性創傷とは?
編集部: 京都大学らの研究グループが取り上げた慢性創傷について教えてください。 松澤先生: やけどやケガなどで皮膚が欠損した場合、傷を治す力があれば通常の治療で治ります。しかし、傷が治りにくい状態を慢性創傷と言い、難治性皮膚潰瘍とも呼ばれています。慢性創傷は治るのに長い時間がかかったり、そもそも治らなかったりすることで、患者にとってつらい状況が続く点が問題です。慢性創傷の原因は、糖尿病や静脈還流うっ滞、褥瘡、膠原病などがあります。慢性創傷を治すためには、傷を乾燥させず、かつ細菌感染を起こさないように毎日傷を洗い、傷を治す軟膏を使用したり、被覆材を貼り替えたりする必要があります。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 京都大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。 松澤先生: 新しい創傷治癒材であるシルクエラスチンの登場は、医療分野において非常に革新的な進展です。従来の治療法が、主に菌の抑制や血流改善に焦点を当てていたのに対し、シルクエラスチンは組織の再生を直接促すことで、治癒過程を根本からサポートします。この特性により、治癒が困難な慢性創傷やそのほかの皮膚疾患に対して、より効果的な治療が可能となるでしょう。シルクエラスチンは高い有効性と安全性が治験で確認されていますが、これからの臨床応用において効果と安全性がさらに確認され、多くの患者にとって有益な選択肢となることを期待しています。
編集部まとめ
京都大学らの研究グループは、「慢性創傷の治療を目的に開発した“人工タンパク質”による治療材料を2025年度中に販売することを目指す」と発表しました。京都大学とタッグを組む三洋化成工業は、2024年4月に薬事承認申請をおこなっており、2025年度中の販売を目指しています。
監修医師
松澤 宗範 先生(青山メディカルクリニック) 【経歴】 2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 開業 【所属学会】 ・日本形成外科学会 ・日本抗加齢医学会 ・日本アンチエイジング外科学会 ・日本医学脱毛学会