中国CATL、ステランティスとスペインに電池工場 6400億円超を投じて「リン酸鉄系」電池を生産へ
EV(電気自動車)用の車載電池で世界最大手のCATL(寧徳時代新能源科技)は、欧州自動車大手ステランティスと共同でスペインにリン酸鉄系リチウムイオン電池の工場を建設する。 【写真】ステランティスがスペインに持つEV用パワートレインの生産ライン 両社は合弁会社の設立に合意し、12月10日に契約を結んだ。CATLの発表によれば、同社はルクセンブルクの子会社を通じて合弁会社に50%を出資、ステランティスはスペインの子会社が40%、フランスの子会社が10%を出資する。 ■計画生産能力は50GWh
合弁会社の取締役会は4名で構成され、CATLとステランティスが2名ずつ指名する。取締役会の会長はCATLが指名権を持つ。 スペインのサラゴサに建設する新工場は「カーボンニュートラル」を前提に設計し、計画生産能力は年間50GWh(ギガワット時)。工期は4年間、建設費用は40億3800万ユーロ(約6422億円)を見込んでいる。 なお、このプロジェクトは各国の独占禁止法当局による審査と、中国およびスペインの所管当局による許認可の手続きを経る必要がある。
ステランティスがCATLとの合弁に踏み込んだ背景には、ヨーロッパの自動車大手が(中国の電池メーカーが得意とする)リン酸鉄系リチウムイオン電池への評価を高めていることがある。 ヨーロッパの自動車大手は、以前はエネルギー密度がより高い三元系リチウムイオン電池を重視していた。だが近年の改良を通じてリン酸鉄系の性能が大幅に向上し、低コストのメリットが際立つようになったからだ。 「スペインのリン酸鉄系リチウムイオン電池工場が2026年末に稼働すれば、よりリーズナブルな価格のEVを生産できるようになる」。ステランティスは合弁契約の声明のなかでそう強調した。
■EV失速はむしろチャンス CATLにとっても、ヨーロッパの自動車大手と対等に手を組むメリットは大きい。 「ステランティスとの合弁事業は、双方の経験と強みを生かした成功事例になるだろう。CATLは全世界のパートナーとともに、より多くの新たな協業モデルを創造していきたい」。同社の董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)を務める曾毓群氏はそう述べ、今後の協業拡大に期待を示した。 ヨーロッパやアメリカの自動車市場では、ここに来てEVの販売が失速している。だが(圧倒的なコスト競争力を持つ)CATLにとって、現状はむしろ海外市場でのシェアを拡大するチャンスになるかもしれない。