東海大相模「ありがたい」 「応援したい」沸く地元 /神奈川
新型コロナウイルスの影響で中止になった今春の第92回選抜高校野球大会の出場校が参加する「2020年甲子園高校野球交流試合(仮称)」(日本高野連主催)の開催が決まった。県勢からは東海大相模が招待される。阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)のグラウンドに立てるのは1試合。夏の甲子園も中止となる中で同校の土井崇司校長は「ワンゲームだが、非常にありがたい。選手もいい顔をしてくれるのでは」と喜んだ。【池田直、宮島麻実】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 東海大相模は昨夏の第101回全国高校野球選手権大会に出場。昨秋は県大会優勝、関東地区大会ベスト4の結果を残し、センバツへの切符を手にしていた。 しかし新型コロナの感染拡大を受け、3月11日にセンバツは中止が決定。「次に向かってチーム一丸で頑張りたい」(山村崇嘉主将)と目指した今夏の第102回全国高校野球選手権大会も、5月20日に地方大会を含め開催されないことが決まった。 東海大相模は感染防止のため3月2日から全校で休校に。野球部も全体練習を休止、学校近くの寮に住む部員はそれぞれの実家に帰った。練習は現在も再開していない。14日にミーティングが開かれ、全部員が3カ月ぶりに集まる。その場で、門馬敬治監督から交流大会への参加が伝えられる予定という。 交流試合は出場予定だった32校が、8月10~12日、15~17日の計6日間で各チーム1試合、合計16試合を行う。開催決定を受け、電話での取材に応じた土井校長は「選手たちには新たな目標を見つけて頑張ってほしいと思っていた。ほかの競技の選手たちも応援する気持ちになれるのでは」と語った。 交流試合の開催に、地元からは喜びの声が上がった。東海大相模野球部の地元応援委員会で委員長を務めた金子匡甫(まさとし)さん(81)は、「一生懸命練習していたのに、発揮する場所がないのはかわいそうだと思っていた。急で驚いたが、選手の気持ちを思うと、開催されてよかったなと思う」。部活の休止でグラウンドから声が聞こえないことに寂しさを感じていたといい、「(無観客開催なので)現地に行けないのは残念だが、精いっぱい応援したい」と顔をほころばせた。 野球部員行きつけの学校近くのすし屋「六ちゃん」の店主、紅林(くればやし)秋男さん(76)は「今年は春も夏もないということになり、残念だった」という。学校が休校になり、この数カ月は部員が店を訪れることはないが、「『良かったな。応援には行けないけど頑張って』と声をかけたい。いつも通り、おいしいおすしを振る舞いたいね」とうれしそうに話した。 ◇感染やケガ気をつけて 県高野連 交流試合の開催決定を受け、県高野連の栗原豊樹専務理事はセンバツ出場が決まっていたがかなわなかった東海大相模について「ショックは計り知れないものだったと思う」と振り返り、「たとえ1試合でも機会を与えてもらったことはありがたいこと」と話した。 一方、「感染リスクは完全に解決しているわけではない」と言及し、「感染やケガに気をつけて、十分に準備を進めてほしい」とも話した。 この夏の第102回全国高校野球選手権大会と地方大会は5月に中止が決定。7月に予定されていた神奈川大会は開かれない。東京都などで独自大会の開催が決定する中、県高野連も議論を進めている。【池田直】 ◇知事「喜ばしい」 黒岩祐治知事は交流試合の開催と東海大相模の出場を受け、「熱い思いを持って野球に取り組んできた高校生の願いに応えるものだ。東海大相模は大変悔しい思いをしていたので、非常に喜ばしいことと思う」とのコメントを出した。【木下翔太郎】 ◇ファン、歓迎と疑問「本当によかった」「違和感」 野球ファンからは歓迎の声が聞かれた。横浜市中区で働く調理師の男性(64)は「甲子園を毎年テレビで見るのを楽しみにしている」という。「一生に一度のこと。新型コロナの感染者が出ないように、何かうまい方法で開催してほしい」と期待した。横浜市中区の50代の女性は、息子が高校球児だった。「3年間部活を頑張ってきたのに中止になるのは悲しかっただろう。本当によかった」と話した。 一方、横浜市を仕事で訪れていた男性(66)は「(センバツは)1回やらないと決めたのに、矛盾するのでは」という疑問を持ったという。「みんな涙をのんで、納得して次のステップに進もうとしているのではないのか。交流試合ができるなら夏の大会はなんでやらないの、と思う」と語った。 また、座間市の男性会社員(55)は「野球だけやるというのは違和感がある。無理やりやる必要があるのだろうか」と疑問を口にした。【中村紬葵、宮島麻実】