なぜ、日本の株主総会は6月と決まっているのか…実は日本固有の謎文化だった!米国ではカクテルパーティー、ショッピングイベントも同時開催
バークシャーの株主総会時期が多いのは「投資の神」ゆえのお目こぼし?
米国では四半期の決算ばかりが注目されるため、日本流の本決算への意識はあまり高くない。それが唯一、意識されるのが株主総会のタイミングだ。バークシャーは12月末締めの財務諸表を年次報告書に開示しているので、日本流にいえば「12月期決算会社」だ。 そのバークシャーが株主総会を開いたのが5月4日。決算期末から5か月余り経過したのちだ。日本の感覚ではかなり遅い。投資の神様だから株主総会の開催が遅くても当局からお目こぼしをいただいているのか?
日本は他国に比べ株主総会の開催時期が早い
いや、そんなことはない。決算期から5か月ほど経った後の株主総会は米欧では標準の日程なのである。データを示そう。 米国企業は決算期末から平均135日、4.5カ月後に総会を開く。英国は137日、4.6カ月後、ドイツは151日、5.0カ月後だ(「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会 報告書」2015年4月から)。日本は85.0日、2.8カ月後と短さが際立っている。筆者がこの原稿を書いているのは6月中旬だから、ちょうど3月期決算会社の総会シーズンが始まろうという時期だ。 一般に日本の市場関係者は情報開示が早いほうが良いと考え、あらゆる開示改革は「さらに早く」「もっと多く」の方向性で進められてきた。決算終了から短期間で株主総会を開催するのも望ましいことだと思いがちだが、コトはそれほど単純ではない。主要な機関投資家たちが日本企業に対し「株主総会前に有価証券報告書を開示せよ」と求めているからだ。
3月期決算会社の7月総会には識者も「良い考えだ」
世界の主要年金や資産運用会社が加盟する国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)のケリー・ワリング前最高経営責任者が、岸田文雄首相に「有報の総会前開示」を求めたことがある。日本のガバナンス改革に数々の助言をしてきたICGNがくり返し提案してきたことだが、ほぼ手つかずのまま今日まで来てしまったテーマのひとつだ。現状で総会前に開示しているのは30社程度にすぎないという。 多くの日本企業は定款で決算期末を定時株主総会基準日とし、そこから3カ月以内に総会を開く。定款変更で基準日を後ろにずらすなどすれば、3月期決算会社が7月に総会を開ける。そうなれば6月に有報を開示し、それに基づいて株主が議決権行使の考えを決めることができる。 筆者がワリング氏に確認したところ、総会30日前から議決権行使のために有報を読めるのであれば、3月期決算会社の7月総会は「良い考えだ」と語っていた。加盟社の運用総額が77兆ドル(約1.2京円)に達する国際的投資家団体のトップがこう言うのだから、7月総会に株主から大きな異論が出るとは考えにくい。 それでもなお6月総会へのこだわりがあるとすれば「1年間の会社行事のスケジュールを変えたくない」「総会で難しい質問が増えると困る」といった、現状追認バイアスが作用している可能性もある。