頭と尻尾が特徴、純粋種「モンゴル羊」。知らないうちに排除されていた
1990年代から、今度は牛の改良が始まった。もともとのモンゴル牛は乳量が少なく、肉自体もそれほど多くない。そのために乳牛や肉牛を外部から導入し、品種改良を続けてきた。そのため最近は、従来のモンゴル牛が少なくなった。 さらに、大量の種牛を外部から連れてきたことで、疫病が発生しやすくなった。また、こうした改良種がモンゴルの厳冬に適応できず、遊牧民に多大な損害をもたらす例もよく見られる。 馬も例外ではなく、2000年代以降は改良が進められるようになった。 こうした品種改良が成功して、遊牧民に経済的な利益をもたらすのだったら、もちろん歓迎する。しかし、チャハル地域の羊の例のように、いつかモンゴル高原からモンゴル家畜の従来の純粋な品種が消えるのではないかという危機感も感じている。この事実は、単にモンゴル一地域の問題ではなく、世界の動物学や遺伝子学、遊牧研究において甚大な損失になるだろう。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第11回」の一部を抜粋しました。
-------------------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。