毎日食べているけど…もしかしてあなたも「新型栄養失調」？

「栄養失調」と聞くと、戦時中や終戦後の食糧不足の時代に起こっていたというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。実は近年問題となっているのが、「新型栄養失調」と呼ばれるものです。新型栄養失調とはどのようなものなのか、なぜ起こってしまうのか、防ぐにはどうすればよいのかを管理栄養士が解説します。 〈写真で見る〉毎日食べているけど…もしかしてあなたも「新型栄養失調」？特徴は ■新型栄養失調ってなに？ 新型栄養失調とは、摂取するエネルギーは足りているにもかかわらず、ビタミン、ミネラルなど特定の栄養素が不足している状態のことです。 原因はさまざまありますが、今回はライフステージに分けてそれぞれの理由を解説します。 ■■若い女性 若い女性は、自己流の極端な食事制限や無理なダイエットにより、栄養失調を引き起こすことがあります。 この世代は強いやせ願望を持っていることがあり、妊娠・出産、その子どもの食生活にも影響を及ぼす可能性があります。 例えば母親がBMI18.5未満である「やせ」の場合、赤ちゃんが低出生体重児で生まれてくる傾向があり、将来生活習慣病の発症する確率が高くなるという報告があります。 それ以外にも、間食を中心とした不規則な食生活や、ファストフードなどによる食事の偏りなども影響していると考えられています。 ■■働き盛りの世代 働き盛りの世代では、自分の健康が二の次になってしまい食事が乱れがちです。 仕事や家事、育児の忙しさから食事に時間を割けられず、手早く食べられて腹持ちのいい丼ものやめん類などに偏っていることが多いです。 このような食事の場合、野菜をとることも難しくなってきます。 そのため、エネルギーや炭水化物が過多になり、ビタミンやミネラル、食物繊維が不足する可能性があります。肥満や生活習慣病のリスクを高めることにつながります。 ■■高齢者 高齢者の方では、食が細くなることで食事量が落ちたり、めん類やお茶漬けなどさっぱりしたもので食事を済ませていることが多いです。 歯を失っている場合は硬いものが噛めないことも大きな要因のひとつです。 また、買い物に出るのが億劫になってしまったり、調理をするのが難しくなってしまうと、簡単なもので食事を済ませるため、栄養が不足しやすい状態です。 これにより、全身の筋肉量や筋力が落ちてきてしまうサルコペニアのリスクを増加させます。 ■不足している栄養素とその働き ビタミンで不足しやすい代表例として、ビタミンAやビタミンD、ビタミンB1があります。 ビタミンAは皮膚や粘膜の健康を維持する働きや視覚反応を正常に保つ働きがあり、ビタミンDはカルシウムの代謝に関与しており、骨の成長を促す働きがあります。 ビタミンB1は炭水化物の代謝をサポートする働きがあります。 ミネラルで不足しやすい代表例として、カルシウム、鉄、亜鉛があります。 カルシウムは骨や歯を丈夫にし、体内の情報伝達の働きがあります。鉄は赤血球中のヘモグロビンの構成成分として全身に酸素を供給する働きがあり、女性は月経により必要量が多いミネラルです。 亜鉛は、多くの補酵素の成分となっており、新陳代謝には欠かせない栄養素です。 ■防ぐにはどうしたらよい？ 新型栄養失調を防ぐには、バランスのよい食事をとることが重要です。 不足している特定の栄養素をたくさん取ればよいと思われる方もいるかもしれません。 しかし、栄養素はとりすぎによるリスクもあります。 特定の栄養素だけをとるのではなく、さまざまな栄養素をまんべんなく、かつ適量とるということが重要になります。 栄養バランスを整えるやり方はさまざまあり、中でもわかりやすいのは和食の献立の基本である「一汁三菜」をそろえるように意識することです。 外食で迷ったら定食スタイルを選ぶ、丼ものの場合は副菜をプラスするなど、できる範囲で少しずつバランスよい形に整えていくと、自然と栄養バランスを整えられます。 また、厚生労働省と農林水産省が共同で策定した、「食事バランスガイド」では、1日に何をどれだけ食べたらよいかの目安がわかりやすくまとまっています。参考にしてみましょう。 ■■参考文献 厚生労働省：「健康と美を食べるもので叶える！～肌や髪、爪も美しく～」働く女性の心とからだの応援サイト（閲覧日：2024年4月10日） 農林水産省：「食事バランスガイドについて」（閲覧日：2024年4月10日） 厚生労働省：「令和元年「国民健康・栄養調査」の結果」」（閲覧日：2024年4月11日） 厚生労働省：「若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題」e-ヘルスネット（閲覧日：2024年4月11日） 厚生労働省：「サルコペニア」e-ヘルスネット（閲覧日：2024年4月11日） 飯田薫子、寺本あい：「一生役立つ　きちんとわかる栄養学」西東社（2019） ライター／宮崎奈津季（管理栄養士）