九州で泥沼抗争中のヤクザ2団体。そのトップ2人が同時に引退した理由
14人の死者、そして無期を含む長期服役者を出した両者の抗争。大組織である道仁会に引かなかった浪川会長は大きく知名度を上げた。 「業界のご法度である組織から離脱した側の九州誠道会は、他団体からその存在を認めてもらえていません。抗争においては警察の厳しいガードを受けるので、付き合いのある友好団体から金銭や武器を提供してもらうのが一般的ですが、浪川会は独立独歩で戦い抜きました。その背景には、都内にも拠点を持つ浪川会長の豊富な資金源と、堅気にも顔の利く豊富な人脈が裏打ちされています。」(前出地元記者) 浪川会長は2018年に総裁に退いたものの組織への影響力は残していたが、5月29日に地元警察署へ引退届を提出した。これに先立つ27日には道仁会で継承式が行われ、福田憲一理事長が五代目会長に就任。小林会長は、先代という立場で身を引いた。 「浪川会長は引退に際して、『小林会長の平和を希求する姿勢に共鳴して、自分もともに引退しようと決意した』といったコメントを発表しています。血で血を洗う抗争を指揮した2人が引退することで、抗争は完全に終結したということを、特に福岡県警にアピールする狙いだとみられます」(前出実話誌記者) ■工藤会に代わる県警の標的 分裂抗争勃発から18年が経ったいま、警察の動向が2人が引退を決めた謎を読み解くカギになると、この実話誌記者は述べる。 「工藤会のトップクラスの摘発が一段落して、福岡県警は道仁会と浪川会の過去の事件を再び洗い直していると言います。今年に入って、道仁会系の元組長らが12年前に久留米市の建設会社に手榴弾を投げ込んだ疑いで逮捕され、小林会長宅が家宅捜索を受けています。 過去の事件も徹底的に追及するという姿勢がにじみ出ています。警察の捜査のメスをかわす狙いも引退の理由の一つになったことでしょう」(前出実話誌記者) ただ、業界の大物である両名の引退は、他団体にも影を落とす恐れが... 「小林会長は外交手腕にすぐれ、2021年には住吉会と五分兄弟会の契りを結ぶという異例の同盟関係を築いています。そして、山口組の分裂抗争の仲裁にも積極的に動いていました。 また、浪川会長も六代目側と神戸側双方に顔の利く人物です。山口組の仲裁に入れるだけの大物同士が引退したことで、今後に起きる暴力団間の抗争を鎮める人物が欠けます」(前出地元記者) 泥沼の抗争を戦った両者の退場は、逆に業界バランスの不安定化にもつながりかねない。 文/大木健一 写真/時事通信社、福岡県警HP