従来の豊かさとは違うがいい時代…実感できたとき、日本の人口均衡がとれる
次の時代・次の文明はどう予想するか
では、次の文明は何が出てくるのか。具体的には言えませんが、はっきりとはしてきているんじゃないかと思います。最近、日本だけでなく、ドイツなどいろんな国で、産業革命が蒸気機関から始まり、情報化へ、Industry4.0と言っています。それからSociety5.0、狩猟採集から始まって、新しい経済社会が始まると言っている。ただこの2つの考え方では、もうちょっとエネルギーに焦点を当ててほしいですね。 つまり次の時代は、再生可能エネルギーを本格的に使う、新しいエネルギー革命が起きるんじゃないでしょうか。今まで産業革命以後は、Industry4.0とは言っているけれども、どういう地下資源を使うかという変化だったと思います。それがこれからは、再生可能な資源を使う。木材などのバイオマスのほか、葉緑素のようなものを使うバイオあるいは小水力発電を念頭に置く。 すると1カ所に集中した大きい発電所を造ることは無駄になり、発電は分散型になっていくのではないかと思います。風力や太陽光も適地は割合制限されますから、どのエネルギーを使うにしても、なるべく地域内でエネルギーの供給を完結させる、あるいは完結はしなくてもメインとして頼っていかなくてはならない社会になっていく。送電もなるべくしないで、地域内でエネルギーを間に合わせる社会になる。そうすれば、エネルギーを基盤にして、地域を形成していくことができないか。地域のあり方も今までと変わってくるのではないかと思います。 日本では四大公害裁判が1960年代後半に始まり、公害や環境教育が展開していきました。地球が危ないよ、といわれたのが70年前後。世界的にもそこから国連の対応が着実に進んでいきます。すでに60年代から、地球を一つの生命体として考えるガイア仮説が出てきました。そうしたバックグラウンドがあって、公害は地域で限定されるものではなく、環境汚染あるいは環境破壊ととらえ、地球という生命体が危ないという非常に大きなスケールで考えるようになりました。 1992年にリオで生物多様性条約が生まれ、国連環境開発会議(地球サミット)で「持続可能な開発」が主要テーマになるなど世界的な世論の形成が進みました。2000年のミレニアムサミットでは、2015年までの具体的なターゲットを決めた「ミレニアム開発目標」MDGsがセットされた。2015年は、「持続可能な開発目標」SDGsのための17のグローバル目標と169のターゲットが決まり、世界がそれに向けて動いている。持続可能性の意味も、単なる生物多様性だけでなく、教育やジェンダーとか社会の持続可能性を含めた課題に変わってきています。 少子化は1970年代半ばに世界の先進国のどこでも始まったけれども、その時代に起きていたことが地球という大きな生命体ガイアの危機。食糧不足も含まれます。その問題の解決へ、今はみんなで向かっているところですから、一つずつ片付けていけたら、安定した社会に向かっていくことになるのではないでしょうか。 SDGsのベースもエネルギーだと思います。国も再生可能エネルギーの見通しを高くしてきていますし、少し考えを変えてきたのではないでしょうか。商社も変わってきている。石炭の投資をやめて、SDGs投資のようなものに変わりつつあります。家族、ジェンダー、企業、組織、国家のあり方、地方のあり方、日常の衣食住のあり方、エネルギーであるとか、多方面でSDGsを実現した社会になっていけば、今までの豊かさとは違うかもしれないけれども、結構いい社会が出来るのではないでしょうか。そうした考え方の浸透が日本はちょっと遅い気がしますが、新しい豊かな社会になったという自覚がもてる、感じられるようになってくることが大事だと思います。 そうすれば人間ですから、生物ですから、生命的な本能、意識下の行動もありうるわけで、自然と男女間の結びつきになるかもしれないし、子供を育てるということが当たり前になってくるかもしれない。SDGsの追求を通して、一度、生物的な存在から少し離れてしまったものを取り戻すことが起きてくるんじゃないかと思います。 これはあくまで期待であり、保証でもなく、論理的に考えたことではありません。ただSDGsを追求することで、均衡がどこかでは取れてくるのではないか。人口減少が緩やかになって止まっていくころに、そういう社会がみえてくるのではないかと思っています。