上司から高すぎる目標を設定された時の対処法
■課題を特定し、記録する 目標がどこから来たものかを理解し、可能な解決策を考えたら、次は事実をまとめなければならない。上司と面談する際には、あなたの思考プロセスを具体的な証拠で裏づけることが不可欠だ。 成功を阻む現在の障壁を具体的に示す。現在持っているリソースと、目標を達成するために必要なリソースとのギャップを明確にする。たとえば、人員、予算、時間の追加が必要だろうか。こうした追加要件を定量化しなければならない。また、関連する企業や業界のベンチマークなど、目標の難易度が極めて高いことを裏づけるような他のデータも検討する。たとえば、6カ月以内に組織文化を変革することを課せられた本部長のラジは、類似した組織で成功した文化の変革には少なくとも1年かかったというデータを収集した。 目標を追求することが、あなたやチームにどのような影響を与えるのかも特定する。キャパシティ、ほかの作業の流れや品質レベルへの影響、ストレスやバーンアウト、潜在的な人員配置への影響などを考慮する。たとえば、不可能な売上目標を与えられた営業担当シニアバイスプレジデントのフランチェスカは、その目標が引き起こすと考えられる人員減と採用の問題を指摘した。 最後に、あなたが導き出した解決策を検討し、それを可能にするために必要なものを説明する。より多くの時間やリソースが必要か。プロジェクトの優先順位を付け直し、現在取り組んでいる他のプロジェクトを廃止する必要があるだろうか。 特定したすべての課題、関連するデータや証拠、可能性のある解決策、仮定を詳細に記録しておく。これは、目標に取り組むためのロードマップとして役立つだけでなく、上司と課題を話し合う際のコミュニケーションツールにもなる。 ■上司の期待を管理する 上司にフォローアップする時は、透明性を保ち、事実を伝える。目標達成の障害を説明し、あなたの評価を裏づける事実を共有する。また、検討した解決策を説明し、最終目標を達成するための別の方法、新たなリソース要件、既存のプロジェクトや一連の作業に関する優先順位の見直しや廃止など、トレードオフや代替案の可能性を示す。 たとえば、新しいソフトウェアの発売の前倒しを要請された製品開発責任者のエミリーは、上司のために詳細なプレゼンを準備し、潜在的なバグや顧客の不満など、製品開発を急ぐことのリスクを説明した。彼女はまた、通常より強引だが十分なテストを行える代替スケジュールを提示し、期限を延長する交渉に成功した。 上司に押し返されたら、協力的な姿勢を保ちつつも、敬意を持って自分の立場を貫く。たとえば、「私もあなたと同じようにこの目標を達成したいと思っていますが、私の分析では非現実的です。どのようにこの評価に至ったのか、教えていただけますか」と聞く。上司が上からの目標をあなたに与えているのなら、その立場に共感を示す。そのゴールを達成しなければ、上司の立場も危うくなるのだ。 上司に反発するのは難しいかもしれない。しかし、あなたが重要な事実を上司に知らせれば、その積極性が高く評価されるだろう。結局のところ、チームの失敗に驚いたり、バーンアウトに至ったり、緊張に満ちた職場になったりするといった別の選択肢は、優秀なリーダーが目指すシナリオではないのだ。 ■困難な目標に挑む 運がよければ、目標の修正を交渉することができる。しかし、上司が譲歩しない場合は、困難に挑むべきだ。ベストを尽くし、自分の行動を記録し、上司に最新情報を伝える。最初は目標を修正できなくても、後で可能になるかもしれない。また、のちに目標を達成できなかった理由を説明する必要が生じた時も、達成するために行ったすべての記録を残すことができる。 目標達成のために努力する時は、人から支援を得れば、それを実現したり、ストレスの多い要求の悪影響を和らげたりする助けになる。また、理不尽な要求に応えることができなくても自分を責めてはいけない。そして、目標が達成できなかったらどうなるかを確認する。ペナルティがなければ、不安やストレスが和らぐかもしれない。 しかし、目標が常に達成不可能で、その結果をあなたが背負うことになるのであれば、新たな道を計画するのが賢明かもしれない。それまではベストを尽くし、高い水準を維持することだ。変化の時が来れば、できることはすべてやったという自信を持って前に進むことができる。 "When Your Boss Gives You a Totally Unrealistic Goal," HBR.org, January 09, 2024.
ディナ・デナム・スミス