妻から夫への“過激な復讐”が話題のドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』、SNSで「印象的だった反応」は?プロデューサーに聞く
ほとんど最終回までの脚本が上がってからクランクイン
倉地さんは小学生のころからドラマが大好きだったという。 「『踊る大捜査線』とか『やまとなでしこ』『ビューティフルライフ』など、キラキラしたドラマを観て育って夢とか希望をもらってきたんです。だから自分がドラマを作る側になったとき、ほんの30分でもいい、つらいことを抱えている人がひととき現実を忘れてドラマに入り込んでくれたらいいなと思っています」 そのためにもドラマを作る段階では、ほとんど最終回までの脚本が上がってからクランクインする。最終ゴールが見えていれば俳優も演じやすいし、演出もしやすいからだ。 「脚本を書いた上村さんが監督もしているので、長く議論させていただいている分、共通認識ができています。出てくるエピソードに関してはいろいろな人たちと話して、こんな夫は嫌だねとか、ここまでいくと復讐したくなるよねとか雑談ベースでたくさん会話を交わします」 脚本・監督の上村奈帆さんについては「言葉に対して思慮深い人」「キャラクター作り、間や行間、背景の掘り下げ方も深い」と、厚い信頼を寄せる。 「どうしても今の時代、刺激の多いドラマが求められるんですが、上村さんとは『悪い人のいないドラマを作りたい』という話をよくしています。視聴者にうけるかどうかはわかりませんが、いつか今とはまったく違うアプローチで“とてつもなく優しいドラマ”が作ってみたいですね」
「あってもなくてもいいけど、あれば豊かになるもの」
観る人が何に共感してくれたのか、今、人々はどういう状況に置かれているのか。たとえばみんな日頃は言えないことをドラマを通して声を上げることがあるのかどうか。前作では、SNSでも「私も夫を抹殺したい」「自分の場合は夫のここが許せない」などたくさんの声が上がった。今の時代にあっても我慢している女性が多いこと、そして率直に話し合えない夫婦の多さが印象的だったと倉地さんは言う。 「SNSで発散するのも悪いことではないけれど、直接向き合って話し合うべき、個人と個人の関係は向き合わなければ進まないと個人的には思います。でも自分を振り返れば、必ずしもそれができているとも思えないし、発信する手段が増えているからこそ直接向き合うことを回避してしまう人が多いのもよくわかるんです。だからこそ、このドラマがそのひとつのヒントになれたら、こんなうれしいことはないと感じています」 世の中には「あってもなくてもいい」ものがあると彼は言う。災害や政治の話のほうが社会的には重要だ。テレビドラマを観なくても生きていける。それでも「あれば豊かになるもの」でありたいと熱がこもる。 「自分がドラマを観て憧れや夢をもらったから、ほんの少しでも誰かを救うものを作りたい気持ちはあります」