三池炭鉱で栄えた大牟田市、クラシック演奏会盛んだった…荒木栄もクラシック基調に労働歌作曲
旧三井三池炭鉱で栄えた昭和期の福岡県大牟田市の炭鉱文化を紹介する展覧会「炭都の音楽と詩歌」が、同市石炭産業科学館で開かれている。労働争議を闘った作曲家の荒木栄(1924~62年)の足跡や、盛んだったクラシック演奏会の軌跡などを約300点の写真やパネルなどで解説。旧産炭地で花開いた独自の文化を多面的に伝えている。 【写真】三池炭鉱・万田坑の「炭鉱電車」
現在も全国で歌い継がれている労働歌「がんばろう」で知られる荒木は、三井三池製作所で働きながら作曲を独学し、生涯で約70曲を残した。戦後最大の労働争議「三池争議」の最中に、労組員の刺殺事件を扱った曲「おれたちの胸の火は」などを作った。会場には、当時の写真や楽譜などが並び、生涯をたどるドキュメンタリー映像が放映されている。
8日の開幕行事では、県内外の合唱団が荒木の曲を披露。圧巻だったのが、労働者階級の連帯を訴えた「地底のうた」だ。序章と4楽章で構成された壮大な組曲で、荒木作品の中で最高傑作とされる。
企画展を担当した同館の長邦年さんは「荒木はクラシック音楽を基調に、日本語で歌いやすいメロディーで構成するという複雑な作業を見事に完成させた。今後は音楽的な側面からも評価すべき作曲家だ」と指摘する。
一方、同市では1947年から、「三池染料音楽愛好会」がピアニストのウィルヘルム・ケンプや原智恵子ら国内外の一流音楽家を多数招いてクラシック演奏会を開催。16年で計131回にのぼった。経緯をたどった当時のパンフレットや雑誌などから、炭鉱で発展した文化的素地が浮かび上がる。
このほか、放浪の俳人・種田山頭火を支えた炭鉱医で俳人の木村緑平ら同市ゆかりの10人の作品を紹介している。7月7日まで。(柳原正和)