“検査後の飲酒”は技術で防げるか? 伊勢崎市 家族3人死亡事故から考える防止策
今年5月、群馬県伊勢崎市でトラックと乗用車が衝突し、家族3人が死亡した事故。トラックを運転していた男からは基準値を超えたアルコールが検出された。 【映像】飲酒運転を防ぐ「アルコールインターロック」とは? 事業用自動車による飲酒運転事故はおととし37件発生しており、そのうち34件がトラックによるものだ。運送事業者は運転者に対し、乗車前後にアルコール検知器を用いた酒気帯び確認が義務付けられている。 ただ、群馬県の事故では、運転手は運転前の検査ではアルコールは検知されていなかった。2018年から2020年にかけて国土交通省に報告された飲酒運転事例のうち、およそ5割が「アルコール検査の後に飲酒していた」というケースなのだ。 国交省の報告書によると、運転手が運行中に酒を購入して飲むケースなどもあるといい、ある運送会社の運行管理者は、「効果的な防止策を実施するのは難しい。1日に何度もアルコールチェックをする方法も考えられるが、運行中のすべての運転手の検査に立ち会うのは不可能」と実情を話す。 では、常に運転手のアルコールチェックができるような「ツール」や「システム」があれば、飲酒運転事故は減るのだろうか?
実は、既に安全装置「アルコールインターロック」という製品が存在する。これは運転手が呼気を吹きかけ、アルコールが検出されたらエンジンがかからなくなるもので、チェック後から乗車前に飲酒するケースは予防できる。また、運行途中で飲酒するケースを想定し、エンジンを切って一定時間経過すると再度のチェックを求められるほか、抜き打ちの検査機能なども搭載されている。
しかし、この「アルコールインターロック」を開発した東海電子株式会社 杉本哲也社長は「技術だけでは限界がある」と語る。 杉本社長によると、システム的にアルコールチェックを促す回数を増やす、車内のアルコールを検知する仕組みを導入する、リアルタイムの監視カメラを搭載するなど、より厳しい仕組みを作ることは技術的には可能だという。ただ、誤作動の可能性や頻回のチェックで業務に支障をきたすなどの課題もあるため、経済的合理性の観点から需要が見込まれないという。 「機械で止めるのは、メーカーとしては当然目指してはいる。しかし、技術に幻想を抱きすぎず、消費者や事業者にも限界を知ってもらうことが、メーカーとしての啓発だと考えている」(杉本社長) 飲酒運転の防止は、技術の限界を知った上で、より効果的な運用と(個人の属性を把握するなど)運転手の管理を組み合わせることが重要だという。 国交省は、ドライバーの安全教育のためのマニュアルを作成しているほか、「専門医受診等による依存症の確認」「家族への協力文書の発出」など、システム以外で事業者が行っている取り組みも紹介している。 (『ABEMAヒルズ』より)