残り2戦に奇跡はある?! なぜ渋野日向子の自力での逆転賞金女王獲得の可能性は消滅してしまったのか
鈴木愛の猛追で「伊藤園レディス」の開幕前の時点で賞金ランキングは3位に後退していた。1位の申ジエとの差は約1356万円で、鈴木とは約631万円。2人より上の順位で終わることを目指した大会で賞金の上積みがゼロだったのだから、落ち込むのも無理はなかった。 全英からの帰国後は異常なまでに盛り上がるシブコ人気の中、優勝も果たした。年間獲得賞金も早々に1億円を突破した。ツアー本格参戦1年目。激変した環境に「私ってついていけているのかなぁ」と戸惑いながらも、しっかり結果を残してきた。 だが、厳しい見方をすれば、最優先の目標と位置づけた賞金女王獲りに向けて「覚悟」が足りなかった。 優勝賞金3600万円と今季最高額だった10月の「マスターズGCレディース」の開幕週の月曜日には、千葉で行われた男子の日米ツアー共催「ZOZOチャンピオンシップ」のイベントマッチを観戦した。その前週の試合はパスして自宅のある岡山市内で調整していた。岡山の隣の兵庫県にある「マスターズGCレディース」の会場を通りすぎての東上。初めて回るコースをチェックするラウンドもできたはずだが、それもしなかった。 「伊藤園レディス」の開催週の月曜日には成田美寿々、青木瀬令奈らに誘われて、「ハマってしまいそう」と言っていた宝塚歌劇団を観に行った。その2週間前には「三菱電機レディス」を休んで台湾で開かれた米ツアー「スウィンギングスカート台湾選手権」に主催者推薦で出場した。 「五輪出場に影響を及ぼす世界ランキングに反映するポイントが高いから」が国内ツアーを休んだ理由だが、その試合で鈴木が優勝し、申ジエは2位となった。思えば、そこから女王争いの歯車は狂いだした。リフレッシュは必要だが、大事な時期でのツアーからの離脱や休みの日の過ごし方には多くのツアー関係者が首を傾げていた。
あるプロは「メンタル的に相当疲れているのではないか。台湾に行ったのも本音は息抜きかも。その気持ちは分からないわけではないけど」と指摘していた。 一方、シブコのメジャー優勝から生まれた大フィーバーは、鈴木らライバル達の闘争心に火をつけた。 「大きな刺激を受けています」と目の色を変えて挑んできていた。 賞金女王を狙う「覚悟」が渋野と、鈴木、申ジエらとでは違っていたのである。「伊藤園レディス」で、鈴木がツアー史上2人目の3週連続優勝を果たしたことで賞金ランキングでトップに立ち、申ジエも8位に入って2位をキープ。渋野と鈴木との差は約2431万円に開いた。申ジエとも約1656万円差となってしまった。 今季残り2試合。次戦の21日からの「大王製紙エリエールレディスオープン」の優勝賞金は、1800万円のため優勝しても1位には届かない。最終戦の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」の優勝賞金は3000万円だが、たとえ優勝しても、鈴木、申ジエが大きく脱落しない限り逆転は不可能で、“自力”での逆転Vは消滅。“他力本願”のほとんど奇跡に近い崖っぷちの状況に追い詰められている。 でも何が起きるかわからないのがゴルフの世界。鈴木にもプレッシャーがかかるし、渋野が、集中力を取り戻せば、面白くなる。今シーズンのフィナーレで、シブコの代名詞である「スマイル」は見られるのだろうか?