【解説】日銀・政策維持の背景は…政治混乱の影響は? マイナス金利解除はいつ?
■決定会合と会見受けた市場の反応
ーー市場の反応というのはどうだったのでしょう。 円ドル相場は、政策維持の発表直後には円安に大きく、1円以上動きました。記者会見の最中は、少し円安になる局面はあったんですが、全体の印象として踏み込んだ発言はなかったので、大きく動く要素はありませんでした。 植田総裁は、比較的慎重な物言いをされる方だなと思ってるのですけれども、粘り強く金融緩和を続けるということをそんなに繰り返したわけでもなく、少し状況に楽観的かなと思いました。 改めて、今回金融政策が変わらなかったのは、賃金と物価の好循環、先ほど第二の力と言ったのですけれども、それがうまく回っていく見極めがまだできないということです。ただ、日銀の内部では一時、政策修正に前のめりな感じもあったんです。
誤算だったのは、予想より早くアメリカのFRBがスタンスを変えてきたことです。 パウエル議長は会見で、金利を下げる議論を始めたと明かし、これを受けて円高・ドル安が大きく進みました。今後、アメリカが金融緩和に舵を切った場合、一緒に日本も動くと想定以上に円高になったりする可能性もあります。日本の「出口戦略」のやり方が難しくなってきます。 また、19日は自民党の事務所などに家宅捜索が入り、政治状況が不安定な時に、市場が政策を理解できなかったり混乱するのはよくないという気持ちもあったのではないかと思います。政府からは副大臣が出ることが多いですが、19日は新藤経済再生大臣が決定会合に出席していました。 ーー最近の円相場を振り返りますと日銀幹部の発言で円高になったこともありましたね。
■植田総裁のチャレンジ発言と円高
今月7日、国会で植田総裁は今後の取り組みについて「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言しました。これが、マイナス金利解除への地ならしか?と市場にうけとめられ、短い時間ですが、1ドル141円台まで急な円高になる事態を招きました。 その前の日にも氷見野副総裁が、金融政策の出口をよい結果につなげることが可能だと講演で話し、市場関係者は金融緩和の「出口」に向かいそうだと受け止めたんです。 ーー市場のその受け止めは合っていましたか? 会見でも質問が出て、それは心構えとして「ここからしっかり取り組みます」という意味だったということでした。私も、発言の直後に植田総裁に近い人に聞いたんですが、一般的な意味での発言だったようで、総裁が市場との対話があまりうまくなかったなと、総裁が少し落ち込んでしまったようだと言っていました。それだけ市場が総裁や副総裁の言動に注目しているということだと思います。 植田総裁は、しっかりとデータに基づいて、慎重に判断すると思います。 ーー前回の日銀会合以降で、何か大きな変化というのがあったのでしょうか?