自律型人材育成で従業員満足度が向上 約7割で効果
自分の判断で責任を持って動ける人材を「自律型人材」と呼ぶ。とくにこのVUCA時代には、自律的に臨機応変に立ち回る能力が求められる。そうした人材の育成に力を入れる企業が増えているが、なんと約5割の企業が「効果あり」と認めた調査結果が報告された。 人材育成支援事業を展開するアルーは、従業員数1000人未満から3万人以上の企業を対象に、自律型人材育成に関するアンケート調査(回答者数404)を実施し、レポートを公開した。それによると、自律的人材育成に向けた取り組みを行っていて、今後も同じ取り組みを続ける、または強化すると答えた企業は全体でおよそ6割にのぼった。企業の規模によって比率は異なり、大企業ほどやや多い傾向が見られるものの、もっとも多かったのが従業員5000名以上1万人未満の企業で約8割だった。 実際に行われた施策は、人事評価制度の改訂がもっとも多く、続いて、eラーニングの導入、ワークライフバランスの整備、1on1ミーティングの導入などとなっている。 効果のほどは、企業規模によってばらつきがあるが、「とても効果的」と「効果的」を合わせた全体の平均は7割近くにのぼる。 具体的な効果は、従業員満足度の向上、社員のスキルアップにつながった、職場のコミュニケーションの活性化、離職率の低下、業績目標の達成につながった、などとなっている。
自律型人材育成の課題とは
これだけ効果が示された自律型人材育成だが、現実の自律型人材が企業内にいる割合はいまだ低い。半数以上という答えが3割を超えたのは、従業員数3万人以上の企業だけだった。まったくいないという答えもあり、目立つのは、「まったくわからない」だ。 自律型人材育成には課題もある。もっとも多かったのは、育成のためのコストの問題だ。だが「発生した課題はない」という答えも同じ約3割あった。そのほか、管理職の負担増、社員間の学習格差、離職率の上昇、社内の規律の乱れといった問題もわずかながら見られた。 自律型人材育成は、始まってまだ日が浅いこともあろうが、約4割の実施企業で離職率が低下したと効果を認めている一方で、離職率が上がってしまった企業がわずかにあること、また育成施策にかかる工数が減ったと答えた企業が2割強あるのに対して、工数が増えたという企業も2割あったことなどからから推測するに、正しい取り組みができていない企業が多いようだ。 自律型人材育成では、自律的能力を存分に発揮して業務に貢献できる、安心して自分で判断できる環境作りも自律型人材育成には欠かせない。個人の能力だけ高めて、上司がそれをうまくマネージメントできなければ、自律的社員はもっといい会社に転職してしまうであろうことは容易に想像できる。
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