昇進減る米労働市場、買い手市場戻る-見捨てられるエントリーレベル
米雇用者数は大幅な増加、賃金伸び加速-米利下げの予想後ずれ
労働市場が軟化するにつれ、力関係は買い手に有利な状態に戻り、雇用者にとっては人材確保のための昇進圧力が低下している。米労働省の最新データによると、4月に自主退職した労働者の数は過去3年間で最低水準に近い。レイオフが歴史的低水準にあるとはいえ、労働者は再就職にそれほど自信を持っていない。
企業はまた、コスト抑制のために昇進ペースを落としてもいる。モルガン・スタンレーが2月に発表したリポートによると、経営トップが決算発表の電話会議で「業務効率化」について語る割合は過去最高ペースとなっている。
米企業はコスト重視、「効率性」アピール頻度が過去最高-モルガンS
ただ、企業は優秀な人材の採用を見送ったり、昇進を遅らせたりすることによって、自社で多大な貢献をしている従業員の士気を低下させ、場合によっては競合他社に奪われてしまうリスクも存在する。
米ハーバード大学行政大学院(ケネディスクール)の経済学教授であるデービッド・デミング氏は、「昇進がなければ辞めてしまう可能性が高くなり、後々役に立つかもしれない人材を失うことになる。短期的には利益の押し上げにつながるが、長期的にはビジネスへの投資不足というリスクになる」と指摘する。
既存従業員が現状から動かないため、若い世代は新しい職を見つけたり昇進したりすることにあまり楽観的でなく、エントリーレベルの従業員の信頼感は16年からのグラスドアのデータで最低レベルに近い。
シカゴを拠点とするキャリアコーチ兼企業トレーナーのデミシャ・ジェニングス氏は、自身の顧客の変化をつぶさに見てきた。数年前は、単純にその職務に就いていた期間の長さで簡単に昇進できたケースもあるが、最近の労働者は自分の力を慎重に記録・報告しなければならない。「昇進したければ、今は本当に戦わなければならない」と語る。
キャリアの遅れは重大な意味を持ち得る。最初に就いた仕事は将来の地位や給与の基準となりかねない。景気低迷時に就職することが長期的に及ぼす悪影響は十分に立証されているが、現在の労働市場はほとんどの尺度で見て依然として力強く、08年組が経験したような状況には程遠い。