「駅にゴミ箱がないからゴミを放置」…ただの“迷惑行為”か、正当な「抗議活動」か?
不法投棄の罰則は「5年以下の懲役」または「1000万円以下の罰金」
そもそも、駅や公共施設にゴミ箱を設置することを直接的に義務付ける法律・条例は存在しない。 ただし、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」は、土地や建物の占有者・管理者に、市町村によるゴミの収集処分に協力することや(6条の2)、土地や建物を清潔に保つことを求めている(5条)。 また、同法の16条は「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」としている。したがって、駅にゴミを放置する行為も、同じく「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に違反する可能性がある。 罰則は5年以下の懲役、または1000万円以下の罰金だ。 「ただし、『みだりに』は解釈の余地があります。また、軽微すぎる構成要件に該当する行為には罰までは科さないとする、『可罰的違法性』と呼ばれる刑法理論もあります。 そのため、一般ゴミをひとつ置いただけで、当然に違法となるわけではありません。 とはいえ、駅にゴミを放置する行為が廃棄物処理法の文言に抵触するのは間違いないです」(杉山弁護士)
ゴミ放置は「抵抗権」の行使なのか?
それでは、ゴミ箱の設置を促すためにゴミを放置する行為は「市民的不服従」として擁護できるだろうか。 杉山弁護士は「法律の専門家としては『やらないほうがよいですよ』としか言えませんね」と語る。 「『人権への重大な侵害がある場合に統治機構に抵抗する』など、究極的な場面での『抵抗権』については憲法学でも議論されており、私も賛同する立場です。 しかし、ゴミ箱の設置を促すために行う表現としての行為が、一応は刑罰法規の適用要件を満たすと解釈できた場合に、なおも違法性を否定できるだけの効果を持つかというと、微妙だと考えます」(杉山弁護士) ただし、不便な状況を強いられている利用者・顧客らの市民が抵抗せず黙っている限り、国や企業は事態を改善するためのコストを投入しないままでいる場合が多い。 「国や企業にとって厄介な状況を作らないと事態の解決に進まない、という考え方にも一理はあると思います」と杉山弁護士は続ける。 「自分がゴミを放置するかどうかはともかく、『抗議』のためのゴミ放置をしている人に、あれこれ言う気もありません。私も、ゴミ箱が増えて欲しいと思っています」(杉山弁護士)
弁護士JP編集部