「投資家のマネーゲーム」が庶民の生活を苦しめている…異常な円安をもたらした「カネ儲け手法」の中身
2024年7月10日、日経平均株価は史上最高値の4万2224円2銭を記録した。その一方で、8月には過去最大の暴落幅を記録し、株価乱高下の時代に突入している。インフレ時代の今、自分の資産を守り抜いていくために私たちはどのような対策をすべきなのか。NVIDIA急成長の背景や新NISAとの向き合い方を見直しながら、日本経済の未来について考えていかなくてはならない。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では世界的経済アナリストのエミン・ユルマズ氏と第一生命経済研究所の永濱利廣氏が語る日本経済復活のシナリオを、『「エブリシング・バブル」リスクの深層』より一部抜粋・再編集してお届けする。 『「エブリシング・バブル」リスクの深層』連載第27回 『「裏金議員よりも明らかに“大問題”」...自民党が誤解している“支持率激減”の『最大の要因』』より続く
円安をもたらしたのは「キャリートレード」
エミン:エミン・ユルマズ。トルコ出身のエコノミスト・グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。 エミン:ここまで円安が進む要因の一つに「キャリートレード」があります。 キャリートレードとは、金利の低い国でお金を借りて、金利の高い国で運用する手法です。金利差の分だけ確実に利益を得られるので、世界中でさかんに行われています。 いま日本の金利が各国に比べて低いので、日本円を借りて、高金利国に投資するという「円キャリートレード」が人気です。要するに円を売って外貨に替える取引なので、円安になります。レバレッジをかけて、自己資金の何倍ものポジションを取る場合も多く、非常に大きなお金が動いています。
円高に振れる可能性
逆に、日銀の利上げ、アメリカの利下げによって日米金利差が小さくなれば、キャリートレードの旨味が減り、ポジションが巻き戻されます。そうなれば円相場は大きく円高に振れるでしょう。 また、アメリカ経済がリセッション入りするとか、リーマン・ショックのような金融システム危機といったリスクオフ・イベントが発生すれば、リスク資産に投資されていた資金が引き揚げられ、円高になると思います。 ちなみにこの対談の直前に4月のFOMCがあったので、パウエルFRB議長の会見を見ていましたが、少なくともアメリカの「利上げ」はもうなさそうだと思いました。 アメリカのFRBは2つの使命を持っています。一つは物価安定、もう一つは雇用の安定です。もしアメリカの失業率が大きく悪化すれば、FRBは利下げに動くでしょう。 ただ、アメリカの経済指標は少しずつ悪化していますが、まだまだ強いので、いますぐ大幅に利下げできる状況でもない。 『「裏金問題」ではない「自公過半数割れ」の“原因”…「円安」がもたらした国民の「怒り」』へ続く
永濱 利廣、エミン・ユルマズ