何度も話題にあがる老後問題にうんざり。要するに老後十分な貯蓄がある人たちはほんの一握りってことですよね?
テレビなどをつけると、しばしば老後に関する問題が取り上げられています。お金がいくら足りないという話や年金制度に関する話、それらを解決する手段としてNISAなどが特集されていることも少なくありません。老後のお金に関する問題を見聞きするたびに、うんざりしている人もいるでしょう。 今回は、実際に老後十分な貯蓄がある人たちがどれくらいいるのかについて紹介します。 ▼年金が「月10万円」で老後が不安…持ち家で「貯金」と「退職金」があれば大丈夫? 生活費を試算
老後の家計は赤字の世帯が多い
これほどまでに老後のお金の問題が取り上げられるということは、経済的に厳しい高齢者世帯が多いのではないかと推測できます。まずは、総務省統計局の2022年の「家計調査」の結果から、高齢者世帯の家計状況をみてみましょう。 2人以上で、かつ世帯主が65歳以上の無職世帯の可処分所得は、月平均で20~23万円ほどでした。可処分所得は、年金などの収入から税金などを除いたもので、一般的に家庭で自由に使える手取り収入を指します。この可処分所得に対して、同属性世帯の支出は月平均で、20~28万円ほどです。85歳以降の世帯以外は毎月2~4万円の赤字となっています。 仮に毎月3万円が足りないとした場合、年間では36万円の不足です。20年間では720万円、30年間では1080万円も足りません。家計調査では、高齢者世帯の持ち家率は90%前後と高くなっています。賃貸住宅に住んでいる場合は、さらに赤字額は膨らむでしょう。
貯蓄が2500万円以上ある高齢者世帯は約3分の1
同じく、2022年の家計調査から、世帯主が65歳以上で、かつ2人以上の世帯の貯蓄状況をみてみます。この属性の世帯における貯蓄額は、平均が2414万円、中央値が1677万円でした。ちなみに、世帯主が60~69歳で2人以上の世帯の平均貯蓄額は2458万円です。ここから負債を差し引いた純貯蓄額は、平均で2251万円となっています。70歳以上の世帯の純貯蓄額は2321万円でした。 世帯主が65歳以上で、かつ2人以上の世帯において、貯蓄額が2500万円以上ある世帯は34.2%となっています。一方で、300万円未満の世帯は14.4%でした。100万円未満の世帯は7.8%です。 家計調査の結果を参考にすると、老後十分な貯蓄がある人たちは、一定数いるとみられます。人や世帯によって生活水準や感覚が異なるため、十分な貯蓄という表現が当てはまるかは判断が難しいでしょう。 しかし、老後の不足金額の推計を上回る貯蓄を持つ世帯の方が多い点をみれば、老後に十分な貯蓄がある世帯がほんの一握りしかいないとはいえません。ただ、あくまでも2022年のデータのため、数十年後も同じようになるとは限らない点には注意が必要です。