若者よ、船乗りにならないか 陸上勤務より高賃金、1カ月の長期休暇も魅力 国内貨物輸送の4割担う海運業界がPRに躍起となる深刻な事情
国内の貨物輸送の約4割を担う物流の大動脈「内航海運」が、慢性的な若手船員の不足にあえいでいる。海上での特殊な職場環境などによる定着率の低さが背景にあるとみられ、鹿児島県内では仕事のやりがいや処遇改善をPRする動きが出ている。 【写真】〈関連〉海王丸に乗り込む鹿児島水産高校の生徒=1月、鹿児島市の鹿児島本港区
内航船は国内の港をつなぎ、旅客や産業資材などを大量に運ぶ船舶。災害時に陸路が断たれた際は代替輸送の役割も担う。エネルギー効率がよく、環境に優しい輸送法としても注目される。 国土交通省の統計によると、2022年度の全国の内航船(貨物船)の船員数は2万1098人。50歳以上が47.9%と半数近くを占め、60歳以上は26.5%と30歳未満の18.9%よりも多い。 九州運輸局鹿児島運輸支局によると、鹿児島県内の22年度の内航船の船員数(旅客を含む)は2417人で、70代のベテラン船員もいる。 陸の職種に比べて目にする機会が少ない内航船の役割や魅力を知ってもらおうと、同支局と南和海事(鹿児島市)などは1月19日、同市の鹿児島港で、鹿児島水産高校(枕崎市)の生徒に海事教室と練習帆船「海王丸」の船内見学を開いた。 同支局の中村成一運輸企画専門官は内航船の勤務体系について、一般的に約3カ月の乗船勤務と1カ月の下船休暇を繰り返し、賃金は陸上勤務者に比べて高いと説明。同校卒で南和海事の永山豊船長(47)は乗船期間短縮の検討やWi-Fi設備の導入など、若い船員の定着率向上を目指した取り組みを紹介した。
同校1年の今門優空さんは「共同生活を送る船では、周囲を見る力が大切だと知った。長期休暇で自分の趣味を充実させられるのは魅力」。永山船長は「若い人がいるだけで船の雰囲気は活気づく。物資輸送は生活を背負うやりがいのある仕事なので、未来の海運業を担う人が増えてほしい」と訴えた。
南日本新聞 | 鹿児島