すかいらーく「資さんうどん」買収は意外じゃない。専門店チェーンを拡充、今後の出店の武器に
そこで、競合している店舗をほかのブランドに変更してきた。近隣にある同じブランドの店舗やグループ内の店舗同士で顧客を奪い合う状態を解消し、各店の売り上げを向上させることが目的だ。 すかいらーくHDの金谷実社長は昨年、決算説明会で「八戸に2店舗あったガストのうち1店舗をしゃぶ葉に転換したところ、(ガスト時代と比較して)売り上げが2.4倍になった。もう1店舗のガストもカニバリが解消され、売り上げが22%上昇した」と手応えを語っていた。
多数の業態を持てば、同じ地域により多くの店舗を出店できる。ファミレスからの業態転換は、しゃぶ葉やとんから亭などの専門店に変わることが多い。今後、資さんうどんも業態転換に活用されることになる。 同一地域に多くの店舗を構えることで、配送効率が高まる面もある。すかいらーくHDは自社工場から各店舗へ配送している。店舗を集中させることで、配送コストの低減にもつながるのだ。 ただ、買収に伴う懸念もある。買収金額の240億円は資さんうどんの規模を考えると高額だ。株式会社資さんの純資産は約24億円で、買収後には210億円程度ののれんが発生することとなる。
すかいらーくHDは2006年に、創業家や野村プリンシパル・ファイナンスによるMBO(経営陣による買収)によって非上場化、2011年にはアメリカのファンド、ベインキャピタルへ売却されている。 その際にものれんが発生しており、現在は約1400億円超に膨らんでいる。すかいらーくHDは国際会計基準を採用し、毎年ののれん償却は必要ないが、のれんの膨張は経営上のリスクでもある。 ■さらなるM&Aの弾みにできるか
さらに、株式会社資さんの2023年8月期は1億9800万円の最終赤字で、2024年8月期は9300万円の最終黒字を見込んでいる。利益額が小さく、投資回収に時間がかかる可能性もある。 こうした点について、すかいらーくHD側は一定期間で投資回収が十分可能との見方だ。収益力についても、現状、一時費用を除いた平常ベースのEBITDAで20億円近い収益力があると評価している。 「当社のサプライチェーンや立地開発能力を活用し、短期間で規模拡大が見込める。コスト削減も可能で、グループの既存店舗の転換候補のブランドとして活用し、全体の店舗のポートフォリオの最適化に貢献すると考えている」(担当者)
コロナ禍を乗り越え、再び成長へ舵を切ったすかいらーくHD。新中期事業計画では2024年からの3年間で3~5件のM&Aの実施を目指している。会社側が言及するように、資さんうどんを活用した業態転換を着実に進め、成功事例を積み重ねることが今後のポイントになりそうだ。
金子 弘樹 :東洋経済 記者